はじめに
以下の「モニター募集」に関しては、募集当時は「3名」のモニターを募集していましたが、「新型コロナウィルスの感染拡大」の影響もあって、「1名のみ」で募集を締め切りました。
当初の目的であった、「各モニターの感想を並べてみることで、そこに共通しているもの、違っているものを浮かび上がってくるのでは?」という試みはできなくなりましたが、このモニターの方の「プロセス」だけでも大変興味深いものになりました。
この「モニター募集」とは違う形で、
他の方の体験記も別の記事で紹介していますので、お時間がある方はそちらも参考にされてください。
「なるべく感想をそのまま紹介する」ようにして、「わかりにくい表現」や、「誤解を招きやすい言葉」に関しては、僕の「注釈」も加えています。
最後の「おわりに」のところまで読んでいただくと、「今回のモニターの方の体験のユニークさ」も見えてくるのかなと思います。
少し長いですが、ゆっくり楽しんでください。
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モニター①さんの紹介
まず1人目のモニターの方ですが、ここでは「モニター①さん」とさせていただきます。
「セッション1」の感想を載せる前に、問診票の情報も参考にしながら、簡単にモニター①さんの紹介をしたいと思います。
①さんは、30代の「農家」をしている男性の方です。
農家として忙しいシーズンは「4〜10月」頃で、今の冬の時期は、比較的仕事に余裕があるので、モニターに申し込もうと決められたようです。
小中高はもちろん、大学でも「野球」をされていた方で、今現在も草野球を続けられています。
問診票に書いていただいた、過去の身体のケガや病気と、現在気になるところをまとめたのが下のリストです。
◯野球で投げると右肩が痛い。
→24歳の時に野球で遠投をして痛めて、20代の頃は痛み止めを飲みながら野球をしていた。
◯偏頭痛がある。
→今まで頭痛はなかったが、この半年で3、4回痛くなった。
◯右足首ねんざ(中学3年生の頃)
◯小学生の頃から、トイレが異常に近かった。
→今もプレッシャーがかかると、すぐにトイレに行きたくなる。
※セッション中に思い出したもの
◯車の座席シートから落ちて、後頭部をぶつけた。(小学校低学年頃)
◯右目の上をぶつけて怪我をした。(赤ちゃんの頃)
感想の中にも書かれていますが、現在、身体に何か特別な症状があるわけではなく、「身体全体のバランスが整うと何が起こるのか?」に興味があるそうです。
それでは、モニター①さんの「セッション1」の感想をどうぞ。
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セッション1回目
最初の問診で気になることを記入していく。
身体の事、精神的なことなど、細かく話をしながら書いていく。
話していく中で、昔こんなことがあったなと思い出す。
床に直立して立ち、身体の歪みをチェックしてもらう。前からO脚は気になっていて、足を真っ直ぐにするとつっかかりは感じる※1。
私の場合は野球の投球による肩の痛みはあるが、トータルでロルフィングの10シリーズを受けると、自分の身体がどうなるのか興味がありお願いした。
精力アップ?
髪の毛のコシがでる?
すきっ歯が良くなる?
足も速くなる?
野球のパフォーマンスも上がる?
かなり欲張りだと気づく。笑
施術する前に、肩、腕、足、首などの全身の可動域のチェックをしてもらった。
セッション中、私は基本目をつぶりリラックスした状態で施術してもらう。 たまに目を開けた時の大友くんの口が気になる※2。 気を送りますと言われた※3のは初めてだったが、自分の感覚的にはよくわからなかった。
基本的に大友くんに内臓、背中などに手を置いてもらっていることが多く、何かしてもらっているという感覚はあまりなかったが、やたらと胃がぐるぐると音を立てる。この間はずっと呼吸に気をつけている。ここでも、あれ、前からたまに胸が苦しくなる時があったな※4とふと気づく。
最初に深呼吸した時は、お腹だけが膨らむ感じの呼吸になり、横隔膜や、背中まで空気が入っている感覚はなかった。しかし、横隔膜辺りを施術してもらった辺りから、呼吸がしやすくなったというか、やたらとリラックスしてくる。
次に下半身に移り、腰の裏というかお尻の上辺り※5を施術してもらう。大友くんが圧を加え、それに合わせるように自分で足や膝、腰、背中などを動かすように言われるが、右は自分でも自由に動いているなと思うが、左になるとなかなかうまく動かせない、この違いはとても感じた。
今日の施術が終わり、ゆっくりベッドから起き上がり、最初に直立した位置に戻ると、あれ、何か目線が高くなったのか?と感じる。自分の考えでは、腰の位置が上がったのが理由なのではないかと思う。
足も前よりすっと立っていて、足の裏全体で地面を感じるというか、地面にしっかり突き刺さっている棒にでもなった感覚とでもいうのか。
あっという間に二時間半が経っていたという不思議な感覚だった。次のセッションが楽しみだ。
セッション後は、呼吸のやり方がうまくなったかなと感じたが、その日の夜になると、まだ少し胸の苦しさは感じる気がする。そして、直立してみるとお尻の上に背骨が乗っているという感覚もある。
次にもっと呼吸を楽にできるようになって、日々の変化を楽しみたいと思う。
※1:自然に立つと「ガニ股」になっていたので、足を「平行」にして立ってもらうと、脚に「つっかかり」の違和感を感じたということです。
※2:セッション中に、施術者である僕が口を開けて動かしていたようで、それが何か意味があることなのか気になったそうです。実際には、エネルギーなどの「目に見えない流れ」を感じて、無意識に動かしているのかもしれません。
※3:僕は、ロルフィングの他に、「ソースポイントセラピー(SourcePoint Therapy)」も合わせてセッションをしています。あまり細かくは説明しませんが、「レイキ」「気功」などと違って、「自分の気を送る」のではなく、「その人の身体の健康のために必要なエネルギーが流れるように、自分がその『媒介』になる」のが、より正確な説明になります。
※4:セッション中に、身体に触れられていることで、ふと「記憶」が出てくることがあります。それも身体の「反応」の一つです。
※5:解剖学的には「大転子」周辺です。
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セッション2回目
2回目は足を中心に行った。
最初に直立し、足の裏の重心を円を描くようにゆっくり移動させる。
その時に、ただ回すのではなく、足の裏全体で一定のスピードを維持しながら、きれいな円を描けているかを観察するように言われる。私の場合は、後ろ重心になる時に右足指だけが浮いてしまっていて※1、きれいな円を描けていないと感じる。
その後に、前回と同様にベッドに腰掛け、首と胴体をそれぞれ右、左に回旋し、左右のバランスを確認する。どちらかと言えば右を向く方が、突っ張りがあると感じる。
ベッドに寝て、リラックスをしながら全身の可動域の確認と施術に入る。
足首を回すように言われて回してみると、左右の動きにばらつきがあり、右がうまく動かせないことがわかる。そういえば、中学生頃に右足首を捻挫したことがあると気づく。
最初に左足から触ってもらう。その後直立して歩いてみると、左足は地面をつかんでいるが、右足がフラフラとして何か歩きづらい感覚がある※2。左足全体が大きくなった感覚もある。
またベッドに寝て、右と左を同調してもらう※3、そうすると今度は、右足の方も動きが良くなり、足全体が大きくなったというかどっしりとした感覚がある。
2回目のロルフィングが終わり、最初の位置に直立して歩いてみると、リラックスしていたので頭がボーッとしながらだが※4、感覚的に下半身全体が大きくなり、歩くと足の裏全体で地面を敏感に感じるようになり、床の微妙な凹凸でさえ、足の裏に伝わる感覚があった※5。
※1:踵の方に重心が移ると、右の足の指だけが浮いてパタパタしていました。そちら側の足に「不安定感」がある時に、そういう動きが見られることが多いです。
※2:左足のみに施術をして、全身にどんな影響が出るのかチェックしてもらいました。このままでセッションを終えてしまうと、「統合されていない」状態になるので、日常生活にも支障が出ることもあります。ロルフィングでは、身体の「統合された」状態を目指しているので、これはあくまで「途中経過」を感じるためのものです。
※3:2の状態を「統合」するために、右の足にも施術をしました。
※4:身体の「緊張」が深いところまで抜けた際に、まれに、立ち上がってからしばらくボーッとすることがあります。「足と地面との感覚」に意識を向けてみると、次第に落ち着いてきます。
※5:地面がアスファルトで「平ら」にならされ、「機能性の高い靴」に守られることがほとんどの「現代の足」にとって、こんな感覚になることは珍しいことだと思います。昔は「無意識」に、それを感じていたと思います。
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諸事情により※1下半身がかなり張っている状態でのセッションとなる。
まず最初に直立する。自分ではまっすぐ立てるようになっている感覚だったが、右腰が前に出ていて、左肩は前に出ている状態で、上と下がねじれているそうだ。
ベッドに腰掛けると、ゆがみはあまり見られないと言われて、下半身のバランスの悪さが上半身にも現れている※2ということか。
ベッドに横になり、大友くんが肘で太ももの外側を10の内、2か3の力で押してくる。太ももが張っているので、そのくらいの力加減でもだいぶ痛みがある※3。
自分で足首を回したり、足の指を動かしたり、骨盤を動かしたりすることで、硬くなっている所を剥がしていく※4。そうすると徐々に楽になってくる※5。
段々と場所を変えながら、太もも、骨盤回り、横隔膜辺り、脇を押してもらって、自分でそれに合わせて動かすの繰り返して、左側が終わってからベッドに寝ると、左脚だけ沈んでいる感覚で重量感も感じる※6。
ここでベッドから起き上がり、地面に立ってみてバランスを確かめる。左脚はまっすぐな感覚があるが、右はまだやっていないので、直立すると右側に傾いてしまい、心地悪さを感じる。
その後、同じように右側も施術してもらい、首回りの動きの確認と施術、かなりリラックスしていて、頭では寝ていないのにいびきをかき始めるという不思議な現象※7が起きる。
すべての施術が終わり、直立すると下半身の左右のバランスが良くなったことと、深呼吸がしやすくなったのを感じる。姿勢が良くなり、胸が開いたというか上半身もしっくりくる感じになる。
帰りに車に乗っている時に、車のシートに違和感を感じた※8。今までは、後ろにシートを倒して猫背気味になる感じで座っていたが、それでは違和感があったので、シートを直立気味にして姿勢良く運転して帰った。ミラーの位置も高く直して、こんなに座高が高いと小さい車は乗れないなと感じ、常に姿勢を意識していくことが大事だなと感じた3回目だった!
※1:長い距離を歩く用事が連日あったそうです。
※2:立った姿勢では、上下でねじれが見られたのですが、座った姿勢になるとそれがなくなっていました。立った姿勢は「足〜骨盤〜頭」の関係性で構造のバランスが決まりますが、座ると「骨盤〜頭」の関係性になり、「足〜骨盤」までは「除外」されます。座った姿勢ではなかったものが、立った姿勢で現れてくるとなると、「足〜骨盤」の関係性の中で、何かしら「うまくいっていないところ」があって、それが「ねじれ」として表現されているのではないかと考えることができます。
※3:いわゆる「痛気持ちいい」の範囲になるように、「コミュニケーション」を取りながら「圧を調整」しています。「問答無用に圧を加えて痛くする」ということではありません。
※4:ロルフィングの創始者の「アイダ・ロルフ」さんから直接ロルフィングを学んだ「エドワード・モーピン」さんから聞いた言葉に下のようなものがあります。
"Hold tissues where they are supposed to be and induce movement."
- Ida Rolf
「組織をそれがあるべきところにホールドして、動きを促しなさい。」
アイダ・ロルフ
「ロルファーが、適切な場所、状態に組織をホールドして、クライアントさん自身に動いてもらう」ことで、組織が身体の中に「再編成」されていくということです。「剥がしている」と感じたそうですが、こちらが「一方的に」圧を加えているわけではなく、①さんのように「自分で動くことで、セッションに主体的に参加する態度」がとても大切です。
※5:最初は痛みを感じることもありますが、少しずつ組織がゆるんできます。
※6:「変化による差」を感じてもらうために、あえて片側だけが終わった状態で、身体全体を感じてもらいました。その後に、ベッドから立ってもらったのも同じ目的です。
※7:「覚醒と睡眠の間」に意識状態がある時に、こういったことが起こります。身体で何が起きているのかをモニターしているけど、とても静かな状態で、だからと言って、寝ているわけでもありません。呼びかけをすると、すぐに反応してくれます。そして、この状態にある時に、身体が「自ら調整する働き」が高まるのではないかと、個人的には考えています。別の表現だと、「瞑想」の状態とも言えるかもしれません。
※8:セッション2の後に、さっきまで履いていた靴に「違和感」を感じたり、骨盤周りが解放されると、今までのピッタリとした服装が心地悪くなってしまうことがあります。
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セッション4回目
前回上半身に施術してもらってから、以前までは猫背気味になっていたのが自然だったのが改善されつつあり、背筋を伸ばし、胸が張れている方が自然な感じになりつつある※1。
今日はいつも通り最初に可動域の確認として、両脚と両腕、肩回り、そして首の動きのチェックをしてもらった後に、両脚の内側の施術に入る※2。
股関節の動きが制限されると、股関節を動かした時に、腰の辺りも一緒になって動いてしまう※3ということで、股関節は股関節だけで動かせるように、横向きに寝た姿勢で、内ももから股下のきわどい部分※4まで施術してもらう。
はじめに左脚から行い、大友くんに指で押してもらいながら、自分で足首や足の指を動かして筋肉の動きを確認する。
私はO脚で、それが原因かわからないが内ももが固くなっていた。
内ももから、脚の付け根まで施術してもらった後に、仰向けになって全身の感覚をチェックしてみると、左脚だけ右脚より2~3cm伸びたような感覚がある。
直立してみると左脚はいいが、バランスが取れていないため、右がふらつく。
次に右脚も施術してもらい、直立すると、股下が上がったような感覚があり、O脚の幅も少し狭まっていた。
6月の人間ドックでどのくらい身長が伸びているか※5楽しみだ!笑
※1:「姿勢をよくしよう」と無理に思わなくても、姿勢の「ベース自体」が変化してくるので、「楽な姿勢」と「いい姿勢」の距離がなくなってきます。
※2:セッション4は、「内転筋」と「骨盤底膜」に対してアプローチしていきます。
※3:「骨盤」と脚の骨である「大腿骨」に付着している筋肉が硬く、制限された状態になると、脚を動かした時に、骨盤もそれに「引っ張られて」動いてしまいます。お互いに「干渉し合っている」のです。大腿骨と骨盤を「分離」することが目的です。
※4:「骨盤底膜」のことです。「骨盤のアライメント」に影響を及ぼしていて、呼吸の際に活躍している「横隔膜」とも関連しています。
※5:10シリーズ後に、身長が2〜3cm伸びた方もいらっしゃいました。主に、「姿勢が悪かった」のが改善されたことによるものだと考えられます。
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ロルフィング5回目
今日は大腰筋の説明から入る※1。
大腰筋は、みぞおちの後ろの背骨辺りから鼠径部まで伸びている筋肉で、脚はそこから振り子のように使うとパフォーマンスが向上する※2とのこと、なるほどと納得しつつ施術に入る。
いつも通り可動域の確認を行いながら、首回り、腕、太もも、様々な所に施術してもらう。
そして今日のメインである大腰筋の動きの確認をする。
みぞおち下辺りの腹筋を押してもらいながらゆっくりと膝を立てていく動きをする※3。
私の場合はO脚であるためどうしても膝を上げる時、がに股気味になり、うまく大腰筋を使えていない※4ようだ。イメージはイチローの打席に入る時で、胸を開いてから脚は内股気味になっている※5。
適切に膝が上がるように筋肉にアプローチしてもらい、この時の呼吸は腹に空気を入れるのではなく、横隔膜に空気を入れながら呼吸した※6。
左脚も同じように施術してもらう。
この5回目のセッションでは、右脚の歪みの方が目立つようだ。
最後の仕上げをしてもらい、ゆっくり起き上がる。
みぞおちの後ろの背骨辺りから脚が出ていて、振り子の原理で歩く意識は少し難しかったが、首もすっと伸びていい姿勢になり、変な筋肉の力を使わず歩けそうだ※7。
残り5回も楽しみである!
追伸:今までは、ランニングすると膝上辺りの内ももとふくらはぎが張る感じになるが、このセッションの後、しっかり意識して走るとどうなるかも楽しみだ。
※1:各セッション前には、そのセッションの「目的」を説明しています。基本的な「解剖学」の情報も共有して、ご自身の身体の「しくみ」を少しでも理解してもらうと、その後の施術での効果が高まりやすくなります。
※2:「大腰筋」という筋肉は、上は「みぞおち」の辺りから、下は「股の付け根」の辺りに付着しています。「脚はみぞおちから生えている」とイメージしてもらって動いてもらうと、動きの「質感、クオリティ」が変わります。これを「ボディイメージの書き換え」と呼んだりします。ちなみに、パフォーマンスが高い「アスリート」の人は、「大腰筋を上手に使えている」ことが多く、その説明をしました。
※3:お腹の辺りから、指先を身体の中に「沈ませていく」ように大腰筋にアプローチして、その状態で膝を上下に動かしてもらいます。つまり、「大腰筋の収縮と弛緩を繰り返す」ことで、「大腰筋ってここにあるんだ」と、「身体で覚えてもらう」ようにします。2の実践です。
※4:「大腰筋を上手に使う」ためには、「がに股」のように膝を外に開くように動かすというよりも、「まっすぐ(少し内股気味)に膝を持ち上げる」ようにすることが大切です。
※5:4の状態を、自然に動作の中で達成できているアスリートは、「少し内股気味」になっています。イチロー選手のバッティング、ランニング動作、ウサイン・ボルト選手のスタートの数歩、NBA選手のジャンプする際のしゃがみ込みなどを観察すると、それがわかります。しかし、「内股で動くとパフォーマンスが上がる」ということとは違います。
※6:呼吸をする時には「横隔膜」が上下に動いていますが、「大腰筋」と密接に関係していて、「相互に影響を与えている」と言われています。大腰筋を「リリース」するために、呼吸をすることで「横隔膜」にも刺激を入れています。
※7:ロルフィングの「10シリーズ」が進んでくるにつれて、「努力感なく」動作を行えるようになってきます。
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ロルフィング6回目
今日は脚の裏側のセッションでした。
前回から走る時の意識を変えたので、脚の張り具合もどうなってるのか気になっていた。
ふくらはぎを押してもらいながら、足の指、足首をモゾモゾと動かし剥がしていく※1。
徐々に上に上がっていき、太もも裏も施術していく。太もも裏に張りがあるようで、時間をかけて剥がしていく。
右が終わり地面に立つと、土踏まずも地面についていて、しっかり立っている感覚になる。
左も同じように施術してもらい、その後全体のバランスを整えてもらい今日のセッションは終了する。
ランニングで足に負担の来ない理想の走り方を目指したいと思います!
※1:セッション3の中でも説明していますので、そちらを参考にされてください。
ロルフィング7回目
4月中頃から農繁期に入り、間が空いてしまっていたため1回メンテナンスを挟んだ※1。
左臀部から左足の先の痺れも出て、普通に歩ける状態ではなくメンテナンスに入る。
いつも通りのチェックが終わり下半身を中心にメンテナンスを行う。
終了後、左と右の差がほぼなくなり、帰りはしっかりと歩いて帰れた※2。
※以上が「メンテナンスセッション」の感想です。
今年36歳年男、年のせいにしたくはないが、身体に疲労が残るのを感じる。
メンテナンスから1週間が経ち、無理な体勢を取る仕事をしたため、左股関節付近の違和感があり、そこを含めて頭、顔を含める上半身の施術をしてもらう。
この日の施術も様々な場所を大友くんに触ってもらい、身体のずれた部分をはめ込んでいく、元に戻していくという感覚か※3。
施術が終わり立つと、ふわふわ浮く感覚があるので、そこを浮かないようにしてもらい歩いてみる※4。
明らかに目線が上がり※5、上半身と下半身のバランスがいい感じである。
身体の不調で仕事できないのは辛いので、引き続き通いながら自分の身体に向き合い、長く仕事ができる、身体を手に入れたいものである※6。
※1:農繁期とコロナウィルス感染拡大の影響もあって、前回のセッションから2ヶ月以上の期間が空いてしまいました。このように「10シリーズの途中で、長期間セッションが中断した場合」には、そのままその続きを行うというよりは、「身体全体のバランス」を取り、またスムーズに「10シリーズの流れに入っていける」ように「メンテナンス」のセッションを挟むことがあります。
※2:1のように期間が空いて、農作業も忙しくなっていたこともあり、かなり身体には歪みが表れ、それに伴い、左の臀部から足先にかけての「しびれ」が顕著でした。帰りはスムーズに歩けていて、「今までで一番変化の実感があった」とメッセージがありました。
※3:「バキっ」とか、「グキっ」っとする施術ではなく、「自然に元のあるべき位置に戻っていく」という感覚だと思います。
※4:セッション7で「頸部から頭頂までが整う」と、「上への抜け」がよくなる分、このように「足元がふわふわする」感じが出ることもあります。それを「グランディング」するように、ベッドでの施術後に、立った状態で簡単な「微調整」をします。専門的には「トラッキング」と呼ばれます。「重力空間の中で、構造が安定するため」に、このようなことをすることがあります。
※5:ロルフィングの目標である「身体がラインに乗る」と、このように「身長が高くなった」感覚や「目線が上がった」感覚があります。
※6:ロルフィングの効果は、「何歳でも、どんな状態の身体でも」感じられるものです。なので、受け続けていくことで、どんどん「身体の構造は安定」してきて、「身体の感度も向上」するようになります。ぜひ、長くいい仕事をしてもらいたいですね。
農作業の蓄積なのか、右手が腱鞘炎気味になったり、右膝が痛くなったり、疲労がダイレクトに身体に表れるようになってきた。あの作業がこの痛みにきてるのだなという実感がある※1。
左の太ももの裏も変わらず張りが残っていて、歩くと左足が遅れてくる感じもあったので※2、そこも含めてトータルで施術をしてもらう。
太ももの裏にに大友くんが肘を押し込んで、私が足首を動かしたり身体を動かしたりしていく、久々に痛い施術だった。
終了後はいつも通り身体の左右のバランスが取れ、目線が上がる感覚がある。
毎回色んなところに疲労が表れているので、農業は機械化が進んでいるけど身体を使う職業だなと改めて感じる。
農作業に耐えうる身体を手に入れたいものだ※3。
※1:農業は本当に「身体が資本の仕事」だと思います。そういう意味では、「アスリート」にも近いなと思います。でも、農業をされている方の中で、「身体のことを気にかけている人」というのは、かなり少ないのではないかと思います。この方は、農作業中にも「どうしたら身体に負荷をかけないか」を考えながらやってくれているようで、身体に表れてくる「症状」と、それを引き起こしているであろう「動作」の「関係性」に気づいてきたようです。まずは「気づく」こと。それがないと、「改善(成長)」はないと思いますから。
※2:「しびれ」などの「神経症状」があると、「動作が鈍くなる」ように感じることがあります。
※3:身体が整ってくると、「いかにこのいい状態をキープできるか」と考えたりするものです。でも、それが「過剰」になってしまうと、「(それを損なう)恐れ」につながっていってしまって、逆に身体を「緊張」させてしまうのが難しいところです。そうではなく、どんどん日々の生活の中で、「ロルフィングで整った身体」を「使って」もらった方が、「何がダメで、何がよかったか」という「フィードバック」を得られるので、それが次回のセッションの「糧(ヒント)」になります。そうやって、受け手の人との「コミュニケーション」を繰り返しながら、「農作業に耐えうる身体」を探っていけたらいいなと思います。
前回より1ヶ月半ほど空いて※1、その間には右手が握りづらくなる※2など色々あったが、当日の朝、右肩が前後左右全く動かなくなり、肩の居所が悪く、痛みもあり困って駆け込んだ※3。
肩を中心に全身を施術してもらう。
肥料散布や、除草剤散布など重いものを背負っての作業の弊害なのかなどと、自分では考える。長年野球で投手をしていて、社会人になってからは痛み止めを打ちながら投げていたことの影響もあると思う※4。
施術後、施術前よりは動きが出たが、念のため整形外科に行ってみると腱板断裂との診断を受け※5、1週間安静とのことだったが、次の日また次の日と可動域が広がっていき、5日後には以前と変わらなくなった。
※1:「農繁期」のためです。この時期は、毎日、朝から晩まで働いているそうです。
※2:「腱板断裂」の症状の1つに、「握力の低下」があります。
※3:後々わかりますが、この時から「腱板断裂」の症状が強く出ていたことが推測できます。
※4:野球で大学に進学するほど、ずっと野球をしてきた①さんですが、この時期から「腱板へのダメージ」は大きかったのだと考えられます。
※5:↓で詳しく解説します。
◯特殊なケースなので補足解説◯
今回の①さんの「セッション9」ですが、少し「特殊なケース」だったので、補足の解説をしたいと思います。
セッション9の前日の夜に、肩が痛くなってあまり寝ることができずに、朝になって動かしてみても、ほとんど肩が動かなかったそうです。(専門的には、「夜間痛あり」ということになります。かなり「炎症反応が強い」状態です。)
実際にfestaに来てもらって、肩の動きを調べみると、立っている状態で、腕を下に下ろしたところから、前後左右に10〜20cmほどしか動かせない状態でした。
セッションが終わると、全身の他の部分の可動域はしっかりと改善して、呼吸も深くなり、かなりリラックスできているようでした。
ですが、肩に関しては、最初よりは少しだけ可動域は改善しましたが、「痛くて肩がほとんど動かせない」状況はそんなに変わりませんでした。
つまり、「全身の肩以外の場所は、ロルフィングに反応してくれたけど、肩だけはあまり反応してくれなかった」ということです。
「(セッションをしても)症状がうんともすんとも言わない時」には、「(反応しなかったところが)何か普通ではない状況」になっていると考えることができます。
ほとんどのセッションでは、セッション中のロルファーのアプローチによって、「関節のアライメントが整う」、「体液の循環が改善する」、「組織の緊張度が低下する」などが起きて、「(結果的に)セッション前にあった症状の変化」が見られます。
それがさほど変わらない時には、「構造の破綻(組織の断裂、骨折などによって、炎症反応が強く出ている、など)」が起きていたり、「組織の変性(悪性腫瘍がある、胃潰瘍が起きている、など)」が起こっていることがあります。(もちろん、「ロルファーのアプローチが適切ではなかった」ということもありますが)
そういう時には、「医療機関の受診」を勧めています。
これまでにも、「ん?ここまで変化がないのはおかしいぞ」と思って、セッション後に病院に行ってもらったら、「内臓の病気」が見つかった人もいらっしゃいました。
今回の①さんに関しては、大学に野球で進学して、さらに社会人になってからも投手として野球を続けていて、その時には「肩の痛み」があって、「痛み止めの注射」を打ちながらプレーしていたので、もうすでに「腱板へのダメージ」がかなりの程度あったと考えられます。
そこに、農家として「日々の農作業」が繰り返されたことで、少しずつ「腱板断裂」が進行していったのではないかと思います。
ここで伝えたいのは、「ロルフィングが魔法のようにすべてを解決する」というわけではなく、「うまくいかないケース」ももちろんあって、その時に「それが何を意味しているのかを考える」ことが重要だということです。(今回であれば、「構造の破綻」や「組織の変性」を疑うということです。)
個人的な考えとしては、「優れたシステム」というのは、「すべての問題を解決するもの」ではなく、「自身のできること、できないことに自覚的であるもの」であると思っているので、「自分で抱え込まない(クライアントさんを束縛しない)」ように注意しています。
この場合は、「構造自体が壊れていて、炎症を適切に処置、管理しなければいけないケース」だったので、これに関しては、「ロルフィングでどうこうできる問題ではない」ということになります。
僕には、「スポーツを専門とした整形外科に、常勤トレーナーとして3年勤務していた経験」があるので、「ん?ここまで変わらなかったら、『肩の中で何かが起きてる』かもしれない」という考えが浮かんできました。
「ロルフィング」のような、いわゆる「代替療法への批判」として、「医学的な知識に乏しく、すべて自分のところで治ると信じてしまって、クライアントさんを囲い込んで、手遅れになることがある」というものがあります。確かに、僕も度々、そういうニュースを見かけることがあります。
こういう仕事をしていると、「自分の能力を過信してしまう」ことに注意を払わなければいけません。「うまくいかないケース」に遭遇したとしても、それを「(自分はすべて治せるという)エゴ」のために「受け入れる」ことができなく、「対応が後手後手になる」のは避けなくてはいけません。
そのためには、「井の中の蛙」にならずに、「他の専門家とのコミュニケーション」を積極的に取ることが重要だと思います。
①さんへは、単に「病院を受診した方がいいと思います」とアドバイスしただけでしたが、将来的には、医療機関、治療家、ボディワーカーなどの「専門家同士のネットワーク形成」もしていきたいなと思っています。
前回より8日後、肩の不安はほぼ解消したが※1全体を見てもらう。
最初の確認で左膝に違和感があるなと気付く。草刈り作業で、膝を支点に左右に刈る動作をし、2日後くらいに右膝も痛くなったことがあったので、その影響かなと思う※2。
首の張りもあり、つまりを流してもらう。
施術後、左膝のはまりが良くないような感じがして、手直ししてもらう※3。
帰宅後ランニングや草刈り作業すると、膝がしっかりはまっている感覚がある。
10回終了した感覚としては、こういう作業をするとここに影響が出てくるというのが自分でわかってきて※2、慣れた楽な動きばかりをせず、身体中全体を使って動くということを心がけ、日々の仕事を行い、セルフケアもしつつ、またロルフィングしに来たいと思う。
※1:日に日に「肩の痛み」は改善していって、「可動域」も戻ってきたようです。「炎症反応」が落ち着いてきたのだと思います。ただ、動かした時の「引っかかり感」はありました。
※2:「痛みや違和感」があった時に、それを「過去の動作の質がどうだったのか」と捉えられるようになっています。プロのアスリートも、「なぜあのプレーで失敗してしまったのか」を考えて、「動作の質」を少しずつ改善していきますが、「農家もアスリート」なんだなと、①さんとセッションするようになってから感じるようになりました。
※3:以前も説明しましたが、ベッドでの施術が終わった後に、立ったり、座った状態で簡単な「微調整」をします。専門的には「トラッキング」と呼ばれます。「重力空間の中で、構造が安定するため」に、このようなことをすることがあります。
おわりに
年齢も近く、同じく青春時代を野球に捧げた①さん。
仕事は「農家」をしていて、僕も実家の秋田では、子どもの頃によく農作業を手伝っていて、その大変さも多少はわかることもあり、セッション前後の時間もいろんなことを話したりして、「親近感」を感じながらのロルフィングの10シリーズでした。
感想を見ると、男性っぽく、「無駄なことをべらべらと話さない」という感じで、事実を淡々と書いているように見えますが、実際にはセッションごとにいろんなフィードバックをくれて、感覚もすごく繊細な方でした。
最初は「どこかに痛みがある」というわけではなかったのですが、10シリーズが進んでくると、いろんなところに「痛み、違和感が顔を出す」ようになります。
こういうことも実はあって、「よし、身体を根本的に改善しよう」という「覚悟」を決めると、その途端に「今まで、うっすら気づいていたけど、目を背けていたもの」がぼろぼろと出てくることがあります。
僕はよくそれを、「家の掃除」に例えて説明するのですが、とりあえず「目に見えるところ」だけでもきれいにするために、「とりあえず押入れに詰め込んでいく」ということがあると思います。
急な来客など、たまにならいいのですが、それが「クセ」になってしまうと、とにかくぽいぽいと「押入れ」に入れておいて、「表面上はきれいな状態をキープしている」ように見えるのですが、いずれ「押入れがいっぱいいっぱい」になってしまう時期があります。
それを意を決して、「押し入れの整理整頓」に取り組み始めると、あれよこれよと「見ないように押し込んでいたもの」が「溢れ出す」ようになります。
その時には、部屋は一時的に「混沌(カオス)」となりますが、それを「経過」しなければ、「いずれもっと大変はことになってしまう予感」があったので、「よし、掃除しよう」と「覚悟」を決めたのだと思います。
テレビなどでもありますが、なかなかそれを「自分一人で」行うのは難しい時があるので、「お掃除、整理整頓の専門家」を呼ぶと、「プロセスがスムーズに進む」ようになります。
今回の①さんにも、そんなことを話していると、「その例え、すごくわかる」と話していました。
けど、①さんでも「自分の身体にきっちり向き合おう」と決めたのは、すごく早い方だと思います。
多くの人は、何か「大きな病気、体調の急変」を経験したりすることで、ようやく「スイッチが入る」のではないでしょうか。
10シリーズを進めながら、身体の「今までのツケ」を払わされるような感じになった①さんですが、いつも前向きで、「どうやって草刈りしたらいいかな?」など、「積極的にアドバイスを求める」①さんの姿を見て、僕も学ぶことが多かったです。
何度も何度も書いていて、しつこいかなと思うのですが、「ロルフィングは痛みを取り除く治療」ではありません。
先ほどの例で言うと、「お金さえ支払えば、さっと押し入れをきれいに片付けてくれる業者」ではないのです。
それよりも、一緒に「押入れの中に詰め込んだもの」を出してきて、その思い出なども聞きながら、「それは、そんなに大切なものだったんですね。だったら、こうしたらどうでしょう?」と提案したり、「今の話を聞いていると、これはもう①さんには必要のないものなのかもしれませんね」と、「対話」をしながら、「部屋全体の再構築、最適化」をしているような「プロセス」なのかなと思います。
これからも①さんは、ゆっくりのペースでロルフィングを続けてくれるようで、少しずつ、自然に、「身体という部屋の秩序、バランス」が取れてくるといいなと思います。
①さん、素晴らしい体験、そして感想をありがとうございました。
Yuta
ちょっと前に、新しい靴を買いました。
上の動画を観ていただくとわかりますが、「下り坂を快適に、効率よく走るため」に、自分たちで靴を作り始めたところ、それが他の人にも口コミで広がり、フランスのアルプスの過酷なトレイルに対応できるように試行錯誤を繰り返した結果、「あらゆる人に対応できる靴」が誕生したということです。
今回のこの記事では、「僕の個人的な靴の好み」を紹介して、そこから「ランニンシューズの発展を支えた日本人職人の存在」と、最近のトレンドである「厚底ランニングシューズの登場」との関係性を考えてみようと思います。
そしてそれは、「僕が最近買った靴」にもつながっていきます。
「革新的な道具の誕生」には、その「背景」があります。
それを「踏まえて」道具を使うことができると、より道具が「扱いやすく」なったり、「愛着」が持てたり、「道具との健全な関係性を保つヒント」にもなります。
みなさんも毎日必ず履いているであろう「靴」という「道具」、その「関係性」を見つめ直すきっかけになればうれしいです。
本気なら「アシックス」
僕は、普段は「アシックス(asics)」を好んで履いています。
「アシックス」の靴は、「寡黙な職人タイプ」が多く、「余計なことをせずに、プロとしてサポートに徹してくれる」靴が多いなと感じています。
基本的には「主役=履く人」であって、「その人の実現したい動きの邪魔をせずに、さり気なく、そして確実にサポートしてくれる」という感じです。
特に愛用しているのは、「ソーティ(SORTIE)」というシリーズと、「スカイセンサー(SKYSENSOR)」というもので、「マラソンシューズ」に分類されるものなのですが、「ソールはフラットで、なるべく薄くて、軽い」のが特徴です。
「ソーティ」はその最たるもので、まるで「裸足で走っている」ような感覚になります。
立っている時には、重心はつま先にも踵にも寄らずに「フラット」な感覚で、歩行の際、足裏の体重移動の軌跡は、とても「自然」なものになります。
「ターサー(TARTHER)」シリーズになると、その体重移動を「アシスト」するような感じで、前にグイッと押し出されるようになりますが、基本的に前に進んでいく陸上競技ならそれでいいのですが、僕は「どんな動きにも対応してくれる万能タイプ」を求めているので、「ソーティ」の方が合っています。
「スカイセンサー」になると、少しソールが「厚く」なり、その分だけ「クッション性」が増して、名前の通りに「空を飛ぶように走る」感覚になります。
さらに、ソールに「余計な細工をしていない」ので、「センサー」のように「地面を繊細に感じる」こともできます。
「どんな動きにも対応できる靴」を探して
今は「ロルフィング」を仕事にしていて、ベッドでのマンツーマンでの「施術」が中心ですが、以前は「トレーニング指導者」をしていました。
高重量のウェイトトレーニングはもちろん、それを爆発的に行うリフティング系のトレーニング、そして、ジャンプやダッシュ、切り返しなどの多様なトレーニングに対応できる靴が必須でした。
各シューズメーカーのマーケティング戦力上、しょうがないかなとも思うのですが、店頭に並んでいる靴というのは、「バスケットボールシューズ」というように、「何かに特化している」ものが多く、「(その一足があれば)何にでも対応できるもの」というのは、実はそんなに多くはありません。
あまり「クッション性」がありすぎても、ソールに「いろいろなものが付加」されていても、重いウェイトを担いだ時に、地面に伝える力が「逃げる」可能性が出てきてしまいます。
そのために、「ソールはフラットで、なるべく薄くて、軽い」方がいいのですが、さらにはそこから「走る」、「止まる」、「飛ぶ」などの動作も行わなければいけないので、それらも満たしてくれる靴となると、僕としては「アシックスのマラソンシューズ」が、「どんな動きにも対応できる、最もバランスがいい靴」になるのです。
店員さん泣かせの困った客
靴屋さんに行くと、デザインなどよりも、まずは「ソールの表情」を眺めます。
それを見るだけで、大体「どんな風に履いてほしいのか」という「作り手の意図」がわかります。
じっと靴の裏底を見ては、少し触ったり、ソールをねじったり曲げたりして、いろいろな靴を手に取ります。
店員さんは、「この人はどんなものをほしがっているんだろう?」と、手に取る靴などをヒントにそれを推測しようとしたりしますが、「エリートマラソンランナー用」の靴を見ていたと思ったら、「投擲選手の練習用」のものを見たり、「フットサル」や、「バレーボール」、「バスケットボール」のものまで見ていたりします。
僕としては、先に書いたように「どんな動きにも対応してくれる万能タイプ」を探しているので、特に「競技という括り」はありません。
店員さんは困ったように、「何かお探しですか?」と聞いてきてくれるのですが、「ランニングシューズの選び方は、まずはキロ何分くらいで走りたいかの目標を聞いて、それに合わせて大まかなモデルを選んで、そこからは、軽いのが好きだったり、クッション性がほしかったり、個人の好みで判断していく」という、「定型パターン」でしか話せない人が多いので、「ソールはフラットで、立った時に体重が前後に寄ったりせずに、なるべく軽くて、薄くて、地面を踏んだ時にズレがない感じで、競技はこだわらない」などという、「わがままな要望」にはなかなか応えてくれません。
こういった「競技、用途などの括りにこだわらず、自分が求める機能をサポートしてくれる靴選び」に関しては、知り合いの「日本一重いベンチプレスを挙げる男(体重別)」の記事も読んでいただけるとおもしろいかと思います。
一人の職人の存在
少し前のテレビドラマに、『陸王』という、元々は「足袋屋」をしていた店が、経営不振で伸び悩んでいた時に、「足袋型のランニングシューズ」を開発して、店を立て直していくものがありました。
その中で、「シューフィッター」と呼ばれる人が登場して、足袋屋さんに靴作りの「ノウハウ」を教えていくストーリーがあるのですが、それには「実際のモデル」が存在していました。
それが「三村仁司」さんという方で、「アシックス」に在籍していた当時、高橋尚子さんや、野口みずきさんなどの、日本人女子マラソン選手の輝かしい活躍を影で支えられてきました。その功績として、「アシックス」には、先ほど僕が挙げたような優れた靴がとても多いのです。
その三村さんは、次の活躍の場として「アディダス(adidas)」を選びました。
僕が大学を卒業してすぐの頃だったので、10年くらい前に、「アディゼロ タクミ(adizero takumi)」と呼ばれるシリーズが、三村さんが開発に関わったことで誕生してきました。
これも素晴らしい「名作」で、トップ選手でも、一般の市民ランナーの方でも、「アディダス」を選ぶ人がとても多くなってきています。
その三村さんが、今度は「ニューバランス(New Balance)」と契約されました。
これから、ニューバランスの「ランニングシューズ」の性能が、どんどん上がってくると予想されています。
そのことが書かれているのが、下の記事です。
記事の中では、箱根駅伝ランナーのシューズの「メーカー分布」のことが書かれてありますが、三村さんの磨いてきた「薄底」の職人の技術と、昨今のランニングシューズ業界を席巻しつつある「厚底」との対比が書かれてあります。
三村さんの意見も載っているので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。
「厚底」とは何か
三村さんの仕事のおかげで、先に挙げた「アシックス」のシューズのような「薄底」が、特に長距離トップ選手向けの「マラソンシューズ」では主流になっていたのですが、そこに彗星のごとく登場してきたのが、「ナイキ(NIKE)」の「ヴェイパーフライ4%」という、上の写真の靴です。
見ての通り、かなり「厚底」なのがわかります。
今までの「マラソンシューズ」の「定説」を、見事に「ひっくり返すコンセプト」を持った靴です。
日本では、「大迫傑」選手がこの「厚底」シューズを履いて、主要なマラソン大会で好成績を収めたことで、一気に「火がついた」ようにこの靴が「トレンド」になりました。
この前行われた「東京マラソン」でも、テレビ中継を観ていると、かなりの人数の市民ランナーの方々が、この靴を履いているのが確認できました。
上の記事には、このナイキの靴の「最新バージョン」に関しての情報が詳細に書かれてありますが、海外のトップ選手からの要望で、「クッション性がほしい」という声が多かったので、「厚底」になったという部分があります。
さらっと読むと、「厚底の誕生は、クッション性のため」と読むこともできますが、僕個人としては、それよりはむしろ、その「厚底」の間にある「カーボンファイバープレート」の存在が大きいのでないかと考えています。
どういうことかと言うと、「カーボンファイバープレート」という素材は、「軽くて、よくしなる」性質を持っています。
その素材を、「クッション性があって、厚い素材」によって「(上下から)挟む」ことによって、「積極的にカーボンファイバープレートをしならせる」ことができるようになります。
そして、それが「しなり返る」時に、「グイッと前に押し出される推進力を生む」ことが可能になるのです。
履いている人にとっては、「厚いソール」の中に埋め込まれている「カーボンファイバープレート」に、「いかに仕事をさせるか(いかにきれいに、効率よくしならせるか)」がポイントになります。(そのためには、「前足部接地」が必要になります。)
先ほどの「ターサー」にも、同じような機能ががあると書きましたが、それよりも圧倒的に「グイッと前に押し出される推進力」が大きく、それを仮に「薄底」に「搭載」したとしても、しっかりと「しならせる」ことは難しいかと思います。
ソールが「厚底」になった理由は、「クッション性」のためというのももちろんだと思いますが、それよりも、「カーボンファイバープレート」という「走りを加速させるエンジン」のような素材を、「より効率よくしならせるためのスペーサーとしての役割」の方が大きいのではないかというのが、僕の考えです。
大迫選手や、今では多くの市民ランナーの方々も使用しているこの「厚底」シューズは、「厚底の中にエンジンを搭載しているような靴」とも言えるかもしれません。
そうなってくると、三村さんに代表される「余計なものをなるべく削ぎ落とした」ことによって生まれてきた「薄底」のシューズと、「走りを加速させるエンジンを積んでいる」ような「厚底」のシューズというのは、ただの「ソールの厚さの違い」という、「単純な構図の比較」ではなくなってくるのではないかと思います。
「道具に仕事をさせる」という感覚
このことを書いていて思い出したのが、日本代表の「アルペンスノーボード」選手の遠征に帯同させてもらった時の経験でした。
アルペンスノーボードは、日々「道具の進化、イノベーション」が起きていて、「ある道具の登場」を境にして、「パフォーマンス」に明らかな差が生まれ、そのために「乗り方(身体と道具の操作の仕方)」までもが、まるで変わってしまうことがあるそうです。
極端な話ですが、その道具の存在を自分だけが知っていて、他の人には教えずにいると、自分だけが勝つことも可能になるということです。
それを聞いて、それほどまでに、「道具の性能がパフォーマンスに与える影響が大きいスポーツ」だと思い知らされたと同時に、「道具にいかに仕事をさせられる身体であるかどうか(ただ、身体を大きくしたり、強くすればいいということではない)」という「視点」が、僕に加わりました。
「スポーツ」と一括りに言っても、「F1」などのような「モータースポーツ」では、「マシンの性能」がものすごく重要になってきますが、その反対に、「水泳」のように「身体能力」で勝負が決まるものもあります。
そういう意味では、「陸上」というのは、かなり「身体能力(走力、跳力など)」に焦点が置かれがちだと思いますが、この「厚底」シューズの登場のおかげで、「積極的に、靴(道具)の性能を引き出せるように身体を使える能力」というのも考えなければいけなくなってくるのではないかと想像します。
「厚底」と言えば、「ホカ」
そんな、ランニングシューズ界に突如として現れた「厚底」シューズにも、「きっかけ」が存在しています。
それは、「僕が最近買った靴」のメーカーである、「ホカ」から始まっていきました。
すでに最初に書いたように、元々は「トレイル(山道)を下る際の、快適な靴作り」から、この「ホカ」は誕生してきたのですが、それが人づてに、いろいろな人や、シチュエーションへと広がっていって、山道などの「オフロード」から、マラソンなどの「オンロード」にも使われるようになります。
実際に「ホカ」には、「マラソンシューズ」のような「オンロード」用の靴もたくさんあって、そこから世界のシューズメーカーである「ナイキ」がそれに目をつけて、先ほどのシューズを開発して、それを各メーカーも追随していっている状況です。
今でこそ、世界中の有名ランナーが履いていることで「ナイキの厚底」が有名になりましたが、元々は「厚底と言えば、ホカ」だったのです。
写真の真ん中が、今回購入したものです。
これは「ランニングシューズ」ではなく、街での「タウンユース」から「ハイキング」などにも対応しているものなので、今までに紹介してきたような「スピードを競う」目的の靴ではありません。
ソールは「
ビブラム(Vibram)」のものを使っていて、「ビブラム」は、「ファイブフィンガーズ(5本指の靴)」が有名ですが、今では様々なシューズメーカーが、ソールの「アウトソーシング(外注)」をしていて、「ホカ」の「オフロード」用のものにも、多く採用されています。
山道などのトレイルが得意なので、デコボコしている路面をしっかりと「グリップ」できるように、ソールには「様々な機能が付加」されていて、「にぎやか」なのが特徴です。
僕はほとんどが、アスファルトなどの「静かな」路面を歩いているので、「ビブラム」のソールだと、少し「騒がしいな」と感じました。
さらにそこに、「ホカ」の代名詞でもある「厚底」も加わるので、かなり「歩き方の調整」をする必要がありました。
「バネ」の存在感
上の動画が、「ホカ」のソールの機能である「PROFLY」の説明なのですが、つま先に「バネ」があるのがわかるかと思います。
今回買った靴で、一番慣れなかったのが、この「バネの扱い方」です。
よく履いている「アシックス」の靴だと、「プロとしてサポートに徹してくれる」感覚なので、僕自身は「何も考える必要がない」状態で、歩いたり、走ったり、様々な動きを行うことができます。
そのおかげで、「地面の声を聴く」といったことや、「足裏の重心移動の軌跡を感じる」というような、「身体の微細な感覚」に「意識を集中する」ことができます。
僕は、より「受動的な歩き方」ができて、「主役=履く人、サポート役=靴」というイメージです。
今回の「ホカ」の靴は、「バネをいかに上手に使うか」がポイントになるので、そのためには、履いているこちら側が、一歩一歩「踏み込む」感じで歩いていかないと、「バネに負ける」ような感覚になってしまいます。
欧米の人のように、体格ががっちりしていて、筋力も十分にあって、歩く際に「ズンズンと踏み込んでいくタイプ」の人であれば、「(何も考える必要もなく、自然に)バネを使える」のではないかと思います。
先ほどの「アシックス」と比較すると、「能動的な歩き方」する人には合っているかもしれませんが、「主役=靴、サポート役=履く人」になってしまう可能性もあるかもしれません。
さらに、この靴が生まれてきた環境は、「フランスのアルプスで、デコボコした岩があるトレイルを下っていく」というものなので、その状況だと、「つま先方向に体重移動しやすく」なります。それによっても「(自然と)バネを使える」感覚になります。
つまり、「(デコボコもしていない)平坦な道」を、「(自分から踏み込んでいく、能動的な歩き方ではなく)受動的な歩き」をする僕にとっては、「歩き方」だけでなく、「意識」も変えなければいけませんでした。
「道具に仕事をさせる」という「コツ」をつかむことができてからは、逆に「下り坂をタイヤが転がる」ように、スイスイと歩いていくことができるようになりましたが、それに気づくまでは少し時間がかかりました。
「補完」か「拡張」か
今まで書いてきたように、「靴」にもいろいろなものがあって、その機能はかなり多様になってきていると思います。
そんな「靴」を「道具」として考えてみると、「道具」には、「人の身体の能力」を、「補完するもの」と「拡張するもの」とがあります。
例えば、「サングラス」というのは、「紫外線に弱い眼」を「(レンズで)補完」することで、眼を「保護」してくれたり、「眩しさを和らげる」ことで、作業に集中することができます。
「サングラス」があることで、「刺激、ストレスを和らげ、その人が持っている能力を存分に引き出す」ことができるのです。それが「補完する道具」です。
それに対して「双眼鏡」は、眼の「遠くのものを見る能力」を「拡張」することができます。
「双眼鏡」のおかげで、「眼が元々持っている能力そのものを延長する」ことができるので、「拡張する道具」になります。
そういう意味で言うと、「アシックス」の靴というのは、「裸足になるべく近く、最低限の保護をしてくれる」ので、「(足の能力を)補完する道具」になって、今回の「ホカ」や「ナイキ」の靴に関しては、「走る際の足の蹴る力を後押ししてくれて、楽にストライドを伸ばすことができる」ので、「(足の能力を)拡張する道具」に当てはまると考えられます。
最近では、「義足」で走るパラアスリートの方が、「健常者が出した世界記録を超えるのではないか」と言われていたりしますが、それもこの問題に類似するものです。
以前の「義足」は、まさに「亡くなった足を補完する道具」という意味合いが強かったと思うのですが、「テクノロジーの進化」によって、「そもそもの足の能力を拡張する道具」というものに「移行」してきているようにも思います。
道具を通して、自分を眺める
「その靴は、そもそも道具として、自分に何をしてくれるものなのか?」
今回、「ホカ」の「厚底」の靴を履いてみて、改めてそんなことを考えました。
「最近流行っている厚底は、どんな感じなんだろう」という感じで、「道具ありき」で靴を買ったのですが、東京マラソンで「厚底」シューズを履いていた市民ランナーの方の中にも、「大迫選手が履いてるから」というだけの理由の人もいたかと思います。
「道具」というのは、「選び方」を間違えてしまうと、自分の「主体性を損なう」可能性も出てきてしまいます。
道具はどんどん「進化」していて、「厚底」のような「革新的」なものも登場してきて、今後はさらに「多様化」が進むかと思います。
それを「選ぶ側」である僕たちが、よくそれを考えて「選択」しなければ、「道具とケンカしてしまう」ことがあったり、「道具に支配される」ということも起きるかもしれません。
今回の記事では、「靴」という「道具」を巡って、様々なことを書いてきましたが、道具のことを考えれば考えるほど、「自分のことをまずはよく知らなければいけない」と思うようになりました。
ついつい、スマホなどで「道具をいろいろと検索すること」に時間をかけてしまいがちですが、まずは「自分自身をよく知ること(自分の身体はどういう状態か、どんな走りをしたいのか)」も、とても大切なことだと思います。
そして、その上で「道具とゆっくりと会話すること」によって、少しずつ「(自分なりの)道具との健全な関係性」を探っていくのがいいかと思います。
言うまでもありませんが、「完璧な道具」などこの世の中にはありません。
「道具の評価(レビュー)」に「振り回される」よりも、「どんな道具とでも、仲良くやっていける自分でありたいな」と思います。
「ホカ」も、最初は少し戸惑いましたが、今ではだいぶ「会話が弾む」ようになってきました。
これはこれで「僕とホカとのいい関係」だなと思っています。
Yuta