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モニターDさんの感想(セッション9 | 40代 女性)

Dさんも「統合のセッション」のセッション9になりました。

感想の中に、「ずっと同じ姿勢を続けていて、寝違いになった」とあるのですが、今回は「寝違いが起こりやすい身体」に関して、僕が普段から考えていることを紹介したいと思います。

それには実は、「動物の進化のプロセス」も関係していて、身近に起こる症状である「寝違い」が、また違った視点から見えてくるとうれしいです。

どうして寝違いが起こるのでしょうか?

そして、動物たちは寝違いになるのでしょうか?

この地球上で動物たちは進化を繰り返してきましたが、その進化の賜物である人間は、何を受け継いで、何を忘れてしまっているのでしょうか?

早速、感想から見てみましょう。

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先日はありがとうございました。

久々に寝違えてしまいましたが、ちょうどその日がロルフィングの日。
絶妙なタイミングですね。
昨日まではちょっと痛くて左に首を向けられませんでしたが、
今日はちょっと違和感は残るものの、ちゃんと左を向けるようになりました。

私は家でテレビを見る角度がいつも右を向く状態なのですが、
そういうのも寝違えたりする原因になると聞いて、
毎日の蓄積が急に症状として出るんだと驚きました。
なるべく正面を向いてテレビを見るように気を付けようと思います。

今日、健康診断でした。
身長が伸びてるんじゃないかとちょっと期待していましたが、現状維持でした。
でも、伸びてるんじゃないかと思っちゃうほどスッとした感じなんですよね。

最初の時とはだいぶ変わってきたと思います。
最近は肩が凝ったと感じることもなくなりました。

残すところあと1回。
なんだか寂しいですが、次回も宜しくお願いします。

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「枯れ木」と「若木」

「ロルフィングあるある」かもしれませんが、予約している日が近づいてくると、いきなり身体に症状が現れることがあります。

Bさんのセッション5にも、そのことを詳しく書きましたが、お時間があったらそちらもご覧になってみてください。

今回のDさんは「寝違い」になってしまったようで、festaにいらっしゃる方の中にも「寝違い」になる方は多く、まずは「どういう身体に寝違いが起こりやすくなるのか?」の説明をしたいと思います。

「寝違い」には、同じような状況で起こる兄弟のような症状があります。それが、「ぎっくり腰」と「ぎっくり背中」です。

どれも、突然「ピキッ(またはグキッ)」となるのが特徴で、しばらく動けなくなってしまいます。

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起こる場所は、24個の「椎骨」と呼ばれる骨が重なった「脊柱」で、重い荷物を床から持ち上げたり、久しぶりのテニスで後ろに振られたボールに手を伸ばしたり、大きなくしゃみなどをして、「脊柱に負荷がかかった時に、それに耐えられずに負荷が抜けていったところ」に、強い痛みと神経症状が出てきます。

すごくシンプルな例えをすると、「木の枝(脊柱)」の両端を手で持って、それをぐいっと曲げて負荷をかけて、それが「バキッ」と折れた状態が、これらの症状に起きていることの大まかなイメージです。

それが腰の辺りで折れるのか、真ん中の背中なのか、首のところに負荷が抜けていってしまうのかの違いが、どこに症状が現れるかの違いになります。(「折れる」という表現を使っていますが、骨が折れる「骨折」を意味しているわけではありません。)

そして、身体には自然治癒力があるので、数日間寝て休んでいると、徐々に症状は治まってきますが、それは、先ほどの木の枝の例えで言うと、折れたところが「ボンドでくっついてくる」ようなイメージです。

でも、もしもまたその木の枝に、同じような負荷が加わったらどうなるかを考えてみてください。

先ほどとは違う場所が折れるでしょうか?

多分そうではなくて、ボンドでくっついてきた場所が、また折れやすいのではないかと想像できると思います。

それが、寝違いやぎっくり腰などのこれらの症状が、「何度も繰り返すようになる(クセになる)」ということの説明になります。

では、どうすればいいのでしょうか?

もしも整形外科で受診したなら、「再発しないように体幹トレーニングをしっかりとしましょう」と言われるかもしれません。

つまり、折れてボンドで自然にくっついてきた場所を、さらに「テープなどでぐるぐる巻きにして補強する」ように、「周りの筋肉をトレーニングして、動かないように固定しましょう」という考えです。

一見すると良さそうなアイディアですが、常に「筋肉を固めておく」ことはできるでしょうか?

これらの症状が起こる時というのは、「かなり疲労した」状態だったり、「予期しない不意の動き」をした際に起こることが多いのですが、その時に「体幹の筋肉を固めて、前に受傷したところを守ること」はなかなか難しいのではないかと思います。

僕は以前、アスリートにトレーニング指導をする仕事をしていたのですが、いわゆる「体幹を固定する」目的のトレーニングもたくさんしてきましたが、それが実際の試合の場面で、こちらの思惑通りに「機能する(生きる)」ことは、なかなかありませんでした。

それではどうすればいいのかというと、「木の枝自体」にヒントがあります。

もしも二つの木の枝があって、片方は「枯れた老木」と、もう片方は「みずみずしい若木」だったとします。

その二つの木の枝に対して、同じように曲げる負荷をかけていったらどうなるでしょうか?

結果はすぐに想像できると思いますが、「枯れた老木」は、少しの負荷でも簡単に折れてしまいますが、「みずみずしい若木」だと、かなり負荷を加えても「しなる」だけで、折れることはありません。

つまり、身体の場合では、脊柱自体の「柔軟性(可動性、弾力)」が十分にあると、負荷を加えても、それを「いなす(逃がす、躱す)」ことができて、折れるリスクは少なくなるのです。

小さい子どもたちに、これらの症状がほとんど起きないのはをそういう理由です。

脊柱の柔軟性が低くなり、一本の硬い木の枝のような状態になってしまうと、負荷がかかった時に、一か所に負荷が抜けやすくなり、簡単に「グキッ」となってしまいます。

さらに一度折れてしまった場合には、いくらボンドで自然にくっついてきて(傷んだ組織が修復されてきて)、テープでぐるぐる巻きにしたとしても(周りの筋肉をトレーニングしたとしても)、やはり折れた場所以外の部分が硬いままだと、そこにまた負荷が集中しやすくなります。

もしも仮に、折れた場所以外の部分が、「若木」のように柔らかくしなやかだったら、折れた場所にだけ負荷が集中することもありませんし、最初からそういった柔軟性があれば、「折れる」ことすらなかったかもしれません。


肩・肘の治療の鍵は、「脊柱の柔軟性」

こういったように、寝違いやぎっくり腰などの症状には、「脊柱の柔軟性」が「直接的に」関係しているのですが、他の身体の部分に痛みがある場合にも、「間接的に」関係してくることが多くあります。

そう考えるようになったエピソードを紹介すると、以前、肩・肘の治療に関して「この人の右に出る理学療法士はいない」と呼ばれている、「山口光國」さんのセミナーに何度か参加したことがありました。

僕も含めて参加者のほとんどが、「どんな肩・肘の施術テクニックを教えてくれるんだろう」と、「ゴッドハンド」の山口先生の一挙手一投足に注目していましたが、教えてもらったのは「脊柱の柔軟性(竹のようにしなる動き)」をまずは評価して、そしてそれを改善して、そこから「肋骨の柔軟性(どんな形にでも変形できる)」をチェックして、それらの最低限の機能が確保できてから、ようやく肩・肘を治療していくということでした。

つまり、肩・肘に痛みや違和感があったとしても、ほとんど場合、「脊柱」とそれとつながっている「肋骨」が、きれいにしなやかに動いてくれたら、肩・肘を触らなくても症状が改善することが多いということです。

肩・肘そのものの構造が破綻していて、そこだけに問題があるという場合は逆に少ないらしく、身体の中心にある「脊柱(と肋骨)の柔軟性」がまずは大事だと、山口先生は説明してくれました。


「脊柱の柔軟性」の大切さを昔から提唱していた
野口整体の野口晴哉さん

他にも「伝説の施術家」として有名な「野口晴哉(野口整体の創始者)」さんは、こんな言葉を残しています。

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健康な体というのは弾力があり伸び縮みに幅がある。

風邪を引くと、鈍い体が一応弾力を回復し緊張した疲労箇所が緩み弾力が回復していく。

例えば、血圧の高い人は、血圧が低くなる。血圧が低くなるというより血管に弾力性が生まれる。

血管の弾力性だけではなく、人間の体中、また心含めた人間全体の弾力性が失われないような生活にすれば突然倒れるとかという事はないわけです。もし硬くなっても風邪をひくと治ってしまう。

人間はだんだん弾力を失っては死ぬ。

(『風邪の効用』、野口晴哉)
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野口整体では、特に「背骨(脊柱)」の状態を丁寧に観察して、調整することでも有名です。(詳しくはこちらのサイト内の「背骨に現れる心と体の状態」を参考にしてみてください。とても丁寧に野口整体のことが説明されてあります。)

ロルフィングを始める前から、野口さんの著書は読んでいましたが、正直、「若さは弾力があること」や、「背骨の柔軟性」などもピンときませんでした。

しかし、僕自身もヨガを10年以上やってきたり、ロルフィングを始め、様々なボディワークを受けてきた今は、その言葉が「実感として」感じられるようになってきました。

そして、30歳を過ぎた辺りから、普段から身体に向き合わずに怠けていると、自転車で後方から車が来ていないか振り向く際に、視野の角度が狭くなっていることに、恥ずかしながら気づきました。(脊柱の回旋の可動域が狭くなっているのです。)

その他にも野口さんは、「身体が硬くなっていると、病気も感じない、異常も感じない、それでいて自分は大丈夫なつもりでいる」ということも言っていますが、これにも深く納得します。

「脊柱の柔軟性」がなくなってくると、「ぎっくり腰になりやすい」、「寝違いも起こりやすい」というばかりではなく、身体が「病気というメッセージ」を送ってくれても、それに気づかなくなってしまいます。

festaにいらっしゃる方にも、大分、脊柱も身体そのものも硬くなっていて、病気もしていて、痛みで苦しいのですが、それでも「自分は大丈夫だから」と繰り返す人もいます。

もしかしたら、「柔軟な思考」という言葉がありますが、「考え方」も「脊柱の柔軟性」に対応しているのかもしれません。

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人が生まれるときは、柔らかくて弱々しい。 

死ぬときは、人は固く硬直している。

物や植物が生きているときは、柔らかくしなやかである。

それらが死ぬと、固くもろくてかさかさだ。

このように、固く硬直しているものは死の仲間であり、
柔らかさとやさしさは命の友である。

(『箴言76』、老子)
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「脊柱」から見る、動物の進化のプロセス

身体を支える「脊柱」が「柔らかくしなやか」であることが、「寝違い」などの症状だけではなく、身体全体が健全であるためにとても大切だということが、少しわかっていただけたと思います。

ここからは、その「脊柱」がどのようなプロセスを経て進化してきたのかを説明していきたいと思います。


この動画は、チーターが走る時に「脊柱がどのように動いているのか」を表しているものですが、まさに先に挙げた野口さんの言葉通りに「弾力があり伸び縮みに幅がある」のがわかると思います。

まるで海の「波」のようにも見えますし、その海を泳ぐ「魚」のようにくねくねと動いています。

このしなやかに動く「脊柱」のルーツは、元々は海を泳ぐ「魚」から発達してきました。

大昔の海に生まれた原始的な生命は、単純な「管」のような構造をしていて、それが海の中を「受動的に漂い(波に動きに揺られるだけ)」、口の中にたまたま入った餌が、管の中を通り抜ける際に、途中で「分解」され、栄養として「吸収」され、残ったものは尻の方から「排泄」するということを、ただただ繰り返していました。

それら一連の流れを、もっと複雑にしていく過程の中で、「内臓」が発達していって、各臓器による「分業制」が進んでいきます。

さらには、ただ「受動的に待つ」だけでなく、「自分で動き回る」ことによって餌を捕まえるようになると、移動のために「脊柱(芯、骨組み)」が発達して、その骨組みを動かすための「筋肉」も発達していきました。くねくねと背骨を滑らかに自由に動かし、餌を求めて、広い海を泳ぎ回ります。

もしも背骨が固定されてしまうと、魚は移動はできなくなってしまいます。魚にとって「脊柱」というのは、「移動のエンジン」そのものになるのです。

そんな中、魚の中でも「チャレンジャー(あるいは「変わり者」)」は、いずれ陸に上がるようになります。そして、陸上の環境でも生きていけるように身体の構造を適応させていって、それが「爬虫類」へと進化していきます。

爬虫類も「脊柱の動き」を主に使って移動しますが、陸上では水中と違って「重力」がかかってくるために、特に「筋骨格系」を発達させていきます。

筋骨格系が発達してくることで、移動がさらに効率よくなり、脊柱だけではなく、「四肢」の機能も高度化していき、それに伴って「脳」が発達していくことになります。



歩くのは「脊柱」なのか、「脚」なのか

そしていよいよ「人間」が生まれてくることになるのですが、その「移動のエンジン」は何でしょうか?

それは、「脊柱を中心にした体幹(ロルフィングでは「コア」とも呼ばれます)」です。

つまり、魚と「違いはない」のです。

一見すると、「脚」で地面を「蹴る」ことで移動しているようにも見えますが、「身体の軸(ロルフィングでは「ライン」とも呼ばれます)」が前に傾き、それによって重心が前に移動するのを、脚を前にスイングさせて、着地した脚で「倒れないように支えている」というのを繰り返しているだけで、「脚の筋力を使って、地面を蹴って進んでいる」わけではありません。

軸が傾く→重心が前に移動する→(バランスが「崩れる」)→脚を前にスイング→着地した脚が支える→(バランスが「回復する」)→また軸が傾く→...

というように、バランスが崩れては、一時的に回復して、またバランスが崩れてというサイクルを繰り返すと、前方向への「歩行」になりますし、軸の傾きがより深くなると、自然に「ランニング」に移行していきます。

必要なのは、「軸の傾き(位置エネルギー)」と「脊柱の回旋動作」であって、「大きくたくましい筋肉」というのは、少し意外な気もしますが、それほど必要ではないのです。


上の動画を見てもらうと、この歩くロボットには、「動きを生み出すモーター(人間では「筋肉」に当たります)」もなければ、それを「制御するもの(人間では「脳神経系」に当たります)」もありません。

大きな脳や立派な筋肉がなくても、「重力(位置エネルギー)」を利用しながら、「(筋力で蹴ることなく)歩くという機能」が達成されています。

そして、実際の人間の歩行には、それに「脊柱の回旋動作によるエネルギー」が加わることで、そのエネルギーが「骨盤帯と肩甲帯によって左右に分散」されて、「(対側の腕と)脚をまっすぐにスイング」させています。

「脚をまっすぐ前にスイング」しているのはどちらも同じなのですが、その「(動きを作り出す)仕組み」が違っているので、このロボットの脚の部分は、実際の人間の脚とは違う構造をしています。

動画をよく見てもらうとわかりますが、ロボットの方は、トレッドミル上を単純に「前に進む」ことしかできないので、少しでも左右に進む方向がずれてしまうと、トレッドミルから落ちてしまいます。

ましてや「急停止」することも、「方向転換」することもできません。

人間にとっては当たり前である、「自分の思うように方向やスピードを変え、スムーズに移動、または停止する」ということを達成するには、このロボットの持っている「(主に位置エネルギーを利用した)歩ける原理」だけでは不可能で、それに「柔軟に動ける脊柱(プラス、左右バラバラに動ける肩甲骨と骨盤)」がなければいけないということになります。

逆に言うと、もしも「人間の脊柱を全く動かない棒のように」してしまうと、「人間は自由に歩けなく」なってしまうのです。

「え、歩くのに脊柱は関係ないでしょ」と思っている人がほとんどだと思いますが、これまでに説明してきたような理屈で、脊柱が固定されてしまうと、自由に歩くことはもちろん、立ち上がることすらできません。

それほど、「脊柱の柔軟な動き」は、人間にとって重要な働きをしているのです。


まるで動物の進化の歴史を「再現」している
赤ちゃんが立って歩くまでプロセス


この動画は、「赤ちゃんが、どういう段階を経て、『ハイハイ(Crawling)』の動作を学習していくか」を表しているものです。

生まれて間もない赤ちゃんが、「手と足」を使って「地面と安定したコンタクトを保つ」ことで、「移動のエンジン」として「脊柱」をクネクネと動かすことで、ずんずんと進んでいきます。

「手と足」で移動しているようにも見えますが、「脊柱から生まれたエネルギー」が大切で、それを「地面に伝え、そのはね返りの反力を地面からもらうための『つながり』をつくるもの」として機能しています。

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そしてこの図は、人間が「生まれてから、ハイハイを経由して、自分の足で立って歩き始めるまでの動作を学習していくプロセス」が、先ほど少し説明した「生物の進化の歴史」と、まるで「再現する(リンクする)」ように進んでいるというコンセプトを示しています。

このコンセプトは、DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization)が提唱していることでも有名で、ハンマー投げの金メダリストである室伏広治さんが自身のトレーニングに、「赤ちゃんトレーニング」としてこのコンセプトを導入したことでも知られています。

ここではそのコンセプトの詳細は説明しませんが、実際に赤ちゃんが歩き始める時には、大人のように立派な筋肉で脚は覆われていなくて、まだふわふわに柔らかい状態です。

その前までのプロセス(上の図の猿まで)で、「脊柱」をたくさん動かして発達させてきているので、重力に対して揺らぎながらバランスを取って立ち上がり、それが前に傾くことで、脚が一歩二歩と前に出て歩き始めます。

その踏み出した脚が、「自分を支えるだけに十分な筋力」さえあれば、歩くのには全然問題はありません。


「動かない動物」

人間の立って歩き始めるプロセスが、動物の進化の流れに合わせて、それを「なぞる」ように再現していることや、そのために「脊柱」がとても大切な役割をしていることを説明してきました。

誰でも、生まれたばかりの赤ちゃんの頃は、とてもしなやかな「脊柱」を持っていました。

でも、これを読んでいる人の中には、その「しなやかさ」を自分では感じられなかったり、「寝違い」のような症状が突然起こるよう身体になっている人もいると思います。

では、なぜ脊柱は硬くなるのでしょうか?

一番最初に思いつくのが、「加齢」によるものだと思います。

これは「絶対的」なものなので、野口晴哉さんの言葉のように、いずれはどんな人でも年齢を重ねると、どんどん硬くなっていきます。(自転車で振り向きづらくなったりもします。)

それでも、若くても硬い人もいますし、ご高齢の方でもすごく柔軟な方もいますが、それは「運動習慣」が関係しているのではないかと、僕は考えています。

人間も含めた「動物」は、その字のごとく「動いている」のが基本です。

もちろん、犬が昼寝をすることもありますし、そんなに活発に動いていないように見えるものもいますが、寝ていてももぞもぞと動いたり、用もないのにウロウロと歩き回ったり、そうかと思うと、急に走り出したり、跳んだりすることもあります。

同じように、人間の赤ちゃんも、子育てを経験した人だとわかると思いますが、基本的に「動いている」ので、じっと「止まる」ことはほとんどありません。さらに成長していくと、どんどん活発になっていきます。(僕の3歳半の息子がまさにそうです。)

そんな活動的な子どもたちが、学校に行き始めると、「授業中は座って集中するように」と、突然言われるようになり、一日中、先生の授業を座って受け続けることを強いられます。

ようやく家に帰ってきたとしても、テレビやゲームがあるので、部屋の同じ場所から動かずに、「同じ姿勢のまま」、何時間も寝たり座っていることもあります。(テレビやゲームをしなくても、塾でのさらなる勉強や、学校からの宿題もあります。)

大人になったとしても、一日中パソコンの前に座って、ずっとそれを見つめたまま仕事をしなければいけなかったり、休みの日は、テレビを心ゆくまで楽しんだり、寝転がってスマホをずっと手にしていたりします。

動物たちに、こんなに「同じ姿勢」を続けさせることはなかなかできません。それは動物たちにとっては、「苦痛」で仕方がないことだと思います。

もしもそれをしようとしたら、「報酬」を与えて、「訓練」するしかありません。

僕たち人間も、子どもの頃は、動物たちのように、自由に動き回り、それ自体が楽しかったと思うのですが、テレビやゲームなど、「脳にとっての報酬」を与えられると、「身体を犠牲にする」ようになるのです。

さらに、学校教育によって、「ずっと座って集中して勉強しなさい」と「訓練」させられると、大人になっても、「パソコンの前で毎日仕事をしていると、身体がボロボロになるけど、でも仕事だからね」と、身体にとっての「苦痛」も、当然のように受け入れるようにもなります。

今回のDさんも、もしも「テレビなし」で、同じ姿勢で、同じ時間過ごすとなると、身体は確実に「何か訴え(痛みや疲労など)」を出してくると思います。

それがないのも、「脳は満足している」からで、これは「脳を大きく発達させた」人間だからこそ、起こっていることなのかもしれません。

そして、それが続いて「動かない動物」になってしまった人間は、「がちがちに硬くなった脊柱」を手にいれて、おそらく他の動物たちには起こらないであろう「寝違い」などに苦しむようにもなるのです。

でも、だからと言って、安易に「テレビやスマホ、ゲームを手放そう」だとか、「パソコンを使ったデスクワークは今すぐやめよう」とは思いませんし、僕自身もそうしているわけではありません。(このブログを書くのに何時間も、パソコンと向き合っています。)

ただ、そうしている時間の中にも、いくつかの「隙間 (余白)の時間」を持たせてあげてほしいなと思います。

具体的には、少し身体をほぐすような動きやストレッチなどの「運動」するのがいいと思います。特別なものでなくても、家にある雑誌に載っているものや、動画で検索したものや、元々知っていたものでも大丈夫です。

職場では、実際に身体を動かすのは難しい場合には、「どこか身体に緊張はないかな」とか、「呼吸は今どこに入りやすくて、どこに入りにくいかな」と、「身体の状態を観察する」ようにしてもらえたらと思います。

それを細切れでも、こまめにしておくと、身体の軽い「リセット」になるので、脊柱が「枯れた硬い脊柱」になるのを防いでくれます。(ポイントは、「適当」でいいので、「ちょこちょこ」と行うことです。)

「『防ぐ』だけじゃなくて、「みずみずしい若木」を保っていたい」という、意識の高い方もいるかと思うので、最後にいくつか参考になる動画を紹介しておきます。

「人間は動物なんだ」ということを思い出させてくれる動画です。




実際に行うのは難しそうにも見えますが、ただ眺めているだけでも、不思議と身体がもぞもぞと動き始めて、ゆるんでくるのを感じる人もいるかもしれません。

長々と難しいことも書きましたが、シンプルに「身体を(特にその中心である脊柱を)いつまでもしなやかに保ちましょう」ということが伝わればいいなと思います。

誰でも、生まれて立って歩き始める時には、気が遠くなるほどの長い年月を経た「動物の進化のプロセス」を、自分の中で「再現(再体験)する」ように成長してきて、子どもの頃は、まるで「動物」のように遊び回っていたと思います。

まだみなさんの身体の中には、その「動物たち」は生きていて、「運動」による刺激によって、いつでも生き生きと動き出す瞬間を待っています。(上のような動画を見るだけでも、みなさんの中の「動物たち」が反応し始めます。)

Dさんは次のセッションが最後になります。

Dさんの身体が、少しでも「元々の自由でしなやかな状態」に戻っていけるように、楽しく、気づきのあるロルフィングになればいいなと思います。

次のセッション10も楽しみにしています。




Yuta

( Posted at:2018年3月 3日 )