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何を想定して、こだわるのか。

青木 : 壊れないってことですかね(笑)。僕は結構早い段階で新しいものに変えるほうだと思います。グローブは使い込むと柔らかくなって、自分の手にも馴染んできます。その分動かしやすくなるものなんですが、それはあえて避けるというか、馴染まなくていいと思っているんですよ。

いまは「ONE FC」が主戦場ですが、去年の年末は「RIZIN」という日本のプロモーションでも試合をしました。団体が違えばグローブも違う。グローブを用意するのは団体側。基本的には毎試合新しいものを使うことになります。慣れたものを使い過ぎて試合のときに違和感があったら良くないというか、グローブなんか何でもいいよっていう状態じゃなきゃダメだと思っているんですよね。

ヘッドギアのメーカーにはこだわっても、オープンフィンガーグローブのメーカーにはこだわらないっていうのは、僕の中では理に適っているんですよ。


総合格闘技家に青木真也さんという人がいる。「バカサバイバー」と呼ばれている人だ。ちょうどこの前、東南アジアの国に仕事で行った時に、大学の同期のトレーナーが彼の話をしていた。上の文章は、同じ道具でも、ヘッドギアはこだわって、オープンフィンガーグローブにはこだわらないという話。なるほどなと思った。

こだわりを作ったり、作り込んだりすると、その周辺に「隙間」が生まれる。得意の近くには、不得意がある。最近、こだわる人が多くなったなと、思うことが多くなった。芸能人がよくトレーニングをしている。そして、そのワークアウトや、その成果の引き締まったカラダをSNSやメディアに公表していたりする。何かに対して準備をすることはとても大切だし、それに対して作り込んでいくことも大切だ。けど、自分ではコントロールできないことがあったり、何が起きても大丈夫なように、少し「余白」というか「遊び」をこしらえておくことも、とてもとても大切だ。そんな芸能人を見るたびに、僕は「なんとも隙間がなくてもろいなぁ」と、目を細くしてしまう。

こだわるべきところはどこか。また、コントロールできなくて、こだわりを作ることで命取りになるところはどこか。それを全体を見ながら、戦略を立てる。青木さんは賢い人だなと思う。自分よりも圧倒的に強い人に出会い、戦ってきたからこその、準備だと思う。アスリートとトレーニングする際に、「どんなことを想定して、準備ができるか」ということを常に考えている。作り込みがきゅうきゅうすぎて、周りを見失ったこだわりを突き詰めると、一見強そうに見えるが、案外もろいものだ。それは、本当に強い相手、本当に不利な状況を想定して準備していないからだ。


青木 : 睡眠と食事が大切だっていうはその通りだと思います。だからこそ、僕は気にしないし、何も持っていきません。寝ろって言われたところで寝ることができて、現地の食事をとって試合ができるヤツが一番強いと思っているから。なんでもこいよっていうヤツじゃないと格闘技は勝てない。枕とか飯とか気にした時点で、アウェーが本当にアウェーになるし、負けですよ。与えられた環境でやるしかない。気にしないから、僕は海外の試合で苦労したことないですもん。

どんな仕事でもそうですけど、環境を整えることばっかり考えてたら海外で働くことがストレスになっちゃうじゃないですか。何が来ても大丈夫っていうスタンスにしたほうが絶対強いですよ。


大切なのはわかっているから、気にしない。本当にそういう状況で、「なんとか勝てる状況はないのか」と考えてきた人だからこその言葉だ。普通は、自分の有利な状況を想定するから、睡眠も食事もコントロールしようとする。それで勝てる相手ならいいが、相手は必死に勝てないようにしようと考えてくる。こだわりを作ると、それさえ崩せば、勝負ありだ。東南アジアで仕事をした時には、「なんでもこい」と思っていた。そうしないと、何も事は進んでいかない。論理の中だけで、ゲームができたら苦労はしないが、往々にして、僕らが生きるこの生身の世界には、論理から外れること、コントロールできないもの、受け入れるしかないものがたくさんある。それをストレスに感じ、自分の能力を下げるのか。進むべきところに常に目線を置いて、様々な状況を受け入れ、楽しんでいけるのか。

この文章は、MLBテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有選手のTwitterから見つけた。青木さんにしても、ダルビッシュさんにしても、想定している相手がものすごいものなんだろうなと思うし、僕はそういうアスリートの助けになりたいなと願っている。




Yuta

( Posted at:2016年10月13日 )