テンセグリティを作る。

久しぶりに工作をしてみました。

作ったのは、「テンセグリティ」のモデルです。


テンセグリティは、アメリカ人のバックミンスター・フラーさんが、

「人がこれからも、この地球で生きていくために」

考え出した構造のコンセプトです。


テンション(張力)とインテグリティ(統合)を合わせたもので、

圧縮材と引張材から成る構造です。




Untitled

具体的には、こんな感じです。


ここでは、木が圧縮材で、糸が引張材になります。

それらが、互いの張力のバランスで構造を保っています。


このバックミンスター・フラーさんというのは、

思想家であり、建築家であり、デザイナーでもあります。

その才能は、「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と評されます。


ロルフィングの授業で初めてテンセグリティのことを知りました。


「からだという構造を、テンセグリティのコンセプトで考えてみる」


そう仮定してみると、おもしろいことが見えてきます。


人を、今までの構造のコンセプト(圧縮モデル)で考えてみると、

どうしても基礎の部分を大きく安定させなければいけません。

建物でも、「基礎が大事」とはよく言われることです。


多くの僕たちが目にする建物は、圧縮の積み重ねによって、

自分自身をサポートして安定しています。


一番下の基礎の部分には、それより上の構造の重さが全てかかります。

構造が大きくなればなるほど、その重さは増していって、

基礎は自然に大きく、硬く、しっかりと安定したものになります。


でも、実際の僕たち人間の基礎にあたる足を見てみると、

片足26個の小さな骨を、靭帯や筋肉、そして膜によって包み込み、

そしてつなげ合って、その構造を支えているのがわかります。


僕たちの体重を支えるにしては、これでは頼りないことが、

他の構造と比べてみるとわかってきます。


foot.jpg


そしてその事実こそが、「どうやら僕たち人間は、自分たちが普段から

慣れ親しんでいる構造のコンセプトとは、違うもので成り立っている

かもしれない可能性」を、想像させてくれます。


そのギャップを埋めてくれるものが、テンセグリティという

コンセプトなのかもしれません。





これは、intension designが作った、テンセグリティを用いた、

足(脚)のモデルです。


テンセグリティは、「最小限の要素で、大きな構造の安定」を

得ることが可能になります。


僕の作ったモデルは、30本の木と糸によってできていますが、

高いところから落としても壊れませんし、

多少無理して押しても壊れません。


負荷がある部分には集中せずに、自分自身を支えている

張力のバランスの中で、分散されていくからです。


さらにテンセグリティモデルは、「圧を加えると拡張する」という

特徴も持っています。


僕の作ったモデルも、両手でグッと押し込んでやると、

それを押し返すように拡がってきます。


風船のように中に空気を溜め込んでいるわけでもないのに、

中から構造が拡張しようとします。


そこにモーターはありません。

自分以外のものからの力によって、それに反応しているだけです。


上の動画では、上からの圧を、構造の形を変えることで受け止め、

そして、次の動きへの推進力へと変換しています。


テンセグリティを内包した構造は、圧縮モデルのそれとは違い、

自分自身の「軽さ」、「丈夫さ」、「拡張性」

そして「移動性」を獲得しました。


確かに、周りの建物を見渡しても、「移動する」ビルを

見たことはありません。


自分の経験的には、日々のロルフィングのセッションの中で、

人のからだに圧を加えていくと、中から膨らんできて、

押し返される感覚があります。


僕たちロルファーは、からだの中に潜んでいる

このテンセグリティパターンを、手を使うことによって、

引き出しているのでしょうか。


さらにロルフィングでは、「足を触られているのに、首が緩みました」

など、直接触れてはいないところに、何か構造的な、エネルギー的な

変化を感じることが多くあります。


触れている僕も、触れられている人も、同時にそれを感じます。




Untitled


「からだという構造を、テンセグリティのコンセプトで考える」


そう仮定してみると、ロルフィングのセッション中に起こる

不思議な感覚が、なんとなく腑に落ちてきます。


専門家ではないので、自分勝手な解釈をつらつらと書いてみましたが、

そんな想像力を刺激してくれほどに魅力的なコンセプトであり、

そしてそれ以上に、バックミンスター・フラーさんは魅力的な

人だったのだと思います。


もうちょっと個人的に勉強してみます。






木と糸だけの、単純な材料によって出来た、

複雑な構造をしたテンセグリティ。


要素は意外に簡単で、その動きの様は複雑。

なんだか人間みたいですね。




Yuta

( Posted at:2013年11月 7日 )

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