どうやら雨が降っていたみたいで、
昼過ぎに外に出てそれに気づいた。
風はなくて、寒くはなかった。
六甲山は雲に覆われていた。
雨の上がった後の山は、まるで運動した後みたいに
湯気を出しているようになるから好きだ。
「山が呼吸している」
子どもの頃によくそう感じていた。
なんとなく歩きたくなったので、
とりあえず歩き出してみると、
いろいろな考えが浮かんでは消えた。
ふと横の道に目をやると、
下校途中の小学生の男の子が、
立ち止まってじっと地面を見つめていた。
「何を見ていたんだろう」
その後、歩きながらそんなことを考えていた。
思い返すと、僕も小学生の頃には、
下校途中にアリの巣を見たり、
水たまりを見たり、
立ち止まって何かを見つめることがよくあった。
そのことで僕は何かを学んだことはないと思うけど、
とても大切な時間だったんだと思う。
僕は今も歩いている。
どこに向かっているのかもわからないけど、
何かに駆り立てられるように歩いている。
でも、たまに立ち止まって何かをじっと見つめるという行為が、
とても大切なんじゃないかと思う。
それは一見、無意味で、無駄なことなのかもしれないけど、
子どもの僕には関係はなかった。
そんなことを考えて歩いていたら、
いつのまにか空の雲には穴が開いていて、
空は青が見えてきていた。
Yuta