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モニターEさんの感想(セッション7 | 30代 女性)

Eさんのセッション7になります。

Dさんのセッション7で詳しく書きましたが、この回では口や鼻にもワークをすることがあるので、Eさんも驚かれたようですが、その効果を全身で感じてもらえたようです。

今回は、ロルファーの大先輩でもある「田畑浩良」さんのブログ記を紹介させてもらったり、もう少し違った観点から口と鼻にワークをすることを解説していけたらと思います。

まずは、Eさんの感想を見てみましょう。

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前回以降、仕事がとんでもなく忙しい状況になり、心身ヘトヘトな状態で今日を迎えました。でもこういう状態だと、かえって変化が分かりやすいかも、と楽しみにしている部分もありました。

今までデスクワークだったのが、急に立ちっぱなしの業務になり、初日はかなり腰が痛みましたが、不思議なことに日を追うごとに痛みが少なくなって、ロルフィングのおかげかな、と思っています。

いつもの左肩甲骨の詰まりが、今日は少し違う場所に移動していて、「何か違うステージに来た感じがする」と言われました。実際、今後の仕事や生活についてビジョンがみえてきて、子供のころからのもやもやがスッキリしてきていたので、そのことをお話しました。身体はこんなに正直に心を反映するんだなあと思いました。お話したことで、さらに自分が向かうところがはっきりしてきた気がします。

腰の痛みに関しては、立ち仕事のせいだけでなく内臓からの影響もあったようでした。確かに心身ストレスフルで胃腸の調子がおかくなってました。「筋肉は問題を反映しているだけなので、元の問題を解消しないで筋肉だけほぐしても解決にならない」というようなことをおっしゃっていて、なるほどそうだよなあ、と思いました。

さて、7回目のメインは頭で、口の中や鼻の中もケアする、なかなかインパクトのある回(笑)。心身弱っているので、あれこれ考えられず、身を任せられる状態だったのがかえって良かったです。

といっても、さほど変わったことをするわけではなく、口の中の施術は歯茎マッサージみたいで気持ち良かったです。口の中も凝るんだなあとびっくり。終わった後は口の中の空間がほわっと広く、柔らかくなりました。立ってみたところ、頭が高い位置にあって軽くて、その分首もすごく楽になりました。

鼻も脳みその中の蜘蛛の巣を払ってもらった感じで、スッキリして気持ち良かったです。

その後頭を触ってもらっていると、地球のプレートが動くように頭の中がぐーっと動く感覚がありました。

まだしばらく立ち仕事が続きますが、かえって立っている時のバランスなんかを感じることができていいかもしれません。次回までよく味わっておこうと思います。

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元が正されると、自然に筋肉も緩んでくれる

感想を見てみると、Eさんの元々の感覚の良さもあると思いますが、使われている表現がとても豊かで、的確だなと思いました。以前から、Eさんの感想はそうだったのですが、「自分の身体を客観的に眺めること」が、さらにできてきているのかなと感じます。

身体の方も変化してきていて、急に立ち仕事をすることになっても、きちんとその状況の変化に、身体の構造が「柔軟に対応」してくれていて、初日こそ腰痛があったようですが、すぐに「最適な状態に順応する」ことができているようでうれしいです。

特定の症状に対してアプローチをしたり、決まった姿勢が楽になるようにトレーニングするわけでもないのですが、「構造のベース(基礎)」の部分のバランスが取れてくると、自然に症状が改善してきたり、様々な環境の変化に対応できるようになってくるのが、ロルフィングの良いところだなと思います。

つまり、「元(構造のベース)を正せば、自然に他が正されてくる」ということです。

それは、「筋肉は問題を反映しているだけなので、元の問題を解消しないで筋肉だけほぐしても解決にならない」と、Eさんも書いてくれていますが、筋肉は硬くなったり、張ったりしますが、「筋肉自体」に問題があることは稀で、ほとんど「必要があって」そうなっています。

その状況に対して、筋肉を「悪者」のように扱って、一方的に力でもみほぐされるのは、筋肉としても納得いかないと思います。「こっちだって、必要があって硬くなっているんだし」と、筋肉の不満の声が聞こえてきそうです。

「マッサージを受けてもすぐに元に戻ってしまう」というクライアントさんも多いのですが、それはまさにそういう状況で、筋肉も納得していないですし、元の問題も解決されていないので、何度も何度も同じような状態に戻ってしまうのです。

時間はかかるかもしれませんが、ロルファーのガイドで、自分の身体とゆっくりと向き合って、少しずつ自分の身体の状態に気づいていくと、元の部分から整っていってくれるので、そうすると筋肉が不自然に緊張することも、身体が痛みや違和感という「メッセージ」を出し続ける必要もなくなってきます。

そしてとても大切なことですが、「元を正そうとするのは、とても根気と時間が必要なプロセスである」ということも覚えていてほしいことです。

それはまた後で、ロルファーの先輩の田畑浩良さんのブログ記事も紹介しながら書きたいと思います。


口は全身の「場所」を反映し、鼻は「深さ」と共鳴している

ここからは、セッション7で口や鼻へワークすることを、少し違った角度から説明していきます。

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上の図は、温泉などでよく見かける「足の裏の反射ポイント」を示しています。

「足の裏」には、「全身の場所」を「反映」しているポイントがあり、それを元にした「足つぼマッサージ」であったり、「リフレクソロジー」という施術方法があるのは、みなさんよくご存知かと思います。

実はこれが「口の中(厳密には「歯」)」にもあるというのが、下の図になります。

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自分がロルフィングの口へのワークを受けている時にも、自分が実際にしている時にも、「そのポイントを押されると、右の腰がうずくな」というような、「特定のポイントを触れると、全身のある部分が反応する」という実感を持っていました。

今回改めて調べてみると、上のチャートを見つけたのですが、やはりこういう「関連」があるという考えもあって、それに対して施術をする方法もあるようです。(とは言っても、その関連を「狙って」ワークをするということは、個人的にはしていません。あくまで自然に手が集まって、そして自然な反応が引き出されてくるようにしています。)

では、「なぜ口が全身を反映するのか」ということを、少し考えてみたいと思います。

僕たちの先祖がまだ海にいた頃は、「世界と出会う(向き合う)」ところは、「眼」ではなく「口」でした。そこの部分には感覚が集中していて、「口を通して」、世界を深く、鮮やかに「認識」していました。(魚は前にしか進まず、その先端は眼ではなく口です。口が一番最初に世界に「触れる」のです。)

その「名残」なのか、生まれたばかりの赤ちゃんは、魚のように口をパクパクとさせて、お母さんの乳首を探り当てます。赤ちゃんにとっての「世界のはじまり」は、「母親という他人との出会い」であって、それは「口」によって行われています。(「視覚」によって、乳首の場所を発見するのではなく、「嗅覚」と「触角」によってです。)

次第に「眼」が、世界と向き合う際の「メインの窓口」にはなりますが、それでも手に取ったものを「口」に運び、それを「舐め回す」ことによって、ものの「奥行き」を学んでいきます。自分で「見たもの」の情報と、それを「舐め回す」ことで得られた情報とを「一致」させていく作業が、子どもが「何でも口に入れたり、舐める」行為というわけです。(そしてそれが、ものを「立体視」することを確立させていき、「差」を「認識」し始めて、「意味」を発見していくようになります。)

そういうことで、「口の中」というのは、「認識のはじまりの場所」でもあり、「わからないものを、口の中で舐め回す」ということは、「世界(わからないもの)を全身で感じる(口の中で舐め回す)」ということでもあるのです。

つまり、生まれて間もないこどもにとっての「口の中」は、「小さな全身」でもあるとも考えられます。

青年が、わからない世界、文化に「飛び込み」、そして全身で未知の体験をすることで、成熟した大人になっていきますが、生まれたばかりの子どもは、口の中に世界を「放り込み」、そしてそれを全身で経験するのです。

その名残があるので、「口の中は全身の場所とリンク」していたり、口の中を実際にワークをしていると、自分の「こどもの頃の記憶(原風景)」がふと浮かんでくることが起きるのかなと、個人的には感じています。

このように、「口」は「全身の場所」を反映しているのではないかと考えているのですが、「鼻」というのは「全身のレイヤーの深さ」と共鳴しているのではないかと感じています。

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この図は、首を縦と横にそれぞれ輪切りにしたものを、「レイヤー(層)」によって色分けをして、その関係性を示しています。

ロルフィングでは、この「レイヤー」という概念がとても重要で、ロルフィングを始めたアイダ・ロルフさんも、「そのレイヤーに留まり続けなさい」や、「もう一つ下のレイヤーまで沈みなさい」などと指導をしていたようです。

身体の構造は、「レイヤー」の構造をしていて、それはよくオレンジに例えられたりします。

つまり、表面はオレンジ色の皮(皮膚)で覆われていて、そのすぐ下には白色でふかふかしたもの(脂肪)があります。その厚さは、みかん、オレンジ、グレープフルーツなど、柑橘類の中でも違っているように、人間の身体でも違いがあります。

その皮をむくと、白い糸のようなものが網目状に広がっています。これが人体では「血管(神経)」に当たります。

それもきれいに剥がすと、おいしそうな実のかたまり(筋肉)が現れます。その実は、皮のような膜(筋膜)で仕切られていて、それをめくると、果肉の集まり(筋繊維)があります。それをプチっとつぶすと、中から果汁(体液)があふれ出します。

このように、人間の身体も幾重にも重なった「レイヤー(層)」があり、それぞれがつながり合って、連携し合いながら、僕たちは日々生きています。

上の図で見ても、喉の辺り(図では上方向)の表層の膜にアプローチすると、首の後ろ(図では下方向)にもその膜はつながっていて、「レイヤーを通して」変化が起きることがわかるかと思います。

こうしたいくつものレイヤーが、身体全体を覆うようにあるので、「一つの特定の筋肉」などに囚われることなく、「レイヤーとしてのつながり」に対して働きかけをすることが大切で、そうすることで、首に触れているだけでも、膜としてのつながりがある腰に変化が起きることもあるのです。(ピンポイントで「押す」というよりも、レイヤーを「捉える」という感触のタッチを使います。)

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セッション7で「鼻」にワークをすると、「背中」や「腰」の痛みや違和感が取れることがありますが、それは鼻にある「ゲート」と、全身を覆う「レイヤー」との関連ではないかと感じています。(上の図では、「ゲート」は赤丸で示されています。)

実際に、鼻の中に指をゆっくりと入れていくと(ゴム手袋をして、ジェルを付けています。)、自然に止まるポイントがあって、それが「ゲート」になります。ゲートに行き当たったら、そこで「無理矢理押したりせずに、ゆっくりと待っている」と、自然に「ゲートが開き」ます。

その「ゲートが開く」瞬間に、全身の緊張が「ふわっと抜ける」感覚があり、その際に違和感や、痛みが変化することがあります。

大体そのゲートは3つほどあって、その3つの「ゲートの深さ」と、身体の「レイヤーの深さ」とが、「共鳴」しているのではないかというのが、個人的に考えていることです。

10シリーズを続けていくと、Eさんのように自然に痛みがなくなっていくのですが、それでも残ることがあります。

「最初の頃にあった腰の痛みが大分ましになったけど、最後の芯がまだあるんですよね」という場合や、「ズーンと響くような肩こりが、ピンポイントであります」だったり、「頭の深いところに、一箇所、痛いような、締め付けられる感じがあります」という時に、このセッション7の「鼻のワーク」が有効に働いてくれることがあります。

こういった場合は、身体の「深いレイヤー」に「制限」があることが多く、セッション7で鼻にワークをして、3番目の深いゲート(図の右側の赤丸)がうまく開いてくれると、その瞬間に痛みがましになったり、なくなったりすることがあります。(深いレイヤー上にあった「部分的な」制限が、鼻の深いゲートが開くことに「共鳴」して、深いレイヤーが「全体的に」緩み、それによって「部分的な」制限も取れるということです。)

Dさんのセッション7の時には、口や鼻へのワークを「解剖学的」に説明しましたが、今回は全身の「場所」と「深さ」との関連を書いてみました。

あくまでこれは僕個人の考えなので、間違っているところや、足りないところ、言い過ぎなところもあるかと思います。一つの考えとして参考にしていただけたらうれしいです。



ロルフィングを受けて、「人生の流れに乗る」ということ

最近の健康に関する世の中の流れは、「巻くだけで骨盤矯正」や、「5分で長年の痛みがなくなった」という、よく見かける宣伝広告でもわかるように、「時間をかけない(プロセスを経ない)」ことが、「過剰に重要視」されているように感じています。

ロルフィングは「治療」ではなく、目的は「痛みの減少、または除去」ではありません。

先にも書きましたが、ロルファーのガイドの元で、10シリーズという「プロセス」を経ることで、自分の身体の状態に、自分で「自覚的」になっていきます。そして身体の構造も整ってくるので、自分を支えてくれる「ライン」にも乗ることができて、「自然治癒力(自己調整力)」も適切に働いてくれるようになります。

今回の感想の中に、「実際、今後の仕事や生活についてビジョンがみえてきて、子供のころからのもやもやがスッキリしてきていたので、そのことをお話しました。身体はこんなに正直に心を反映するんだなあと思いました。お話したことで、さらに自分が向かうところがはっきりしてきた気がします。」という部分がありますが、重力空間の中で、最適に身体の構造を取れるようになってくると、こういった変化を感じることもあります。(こんなことを伝えてくれることもあるので、僕はロルファーをしているのだと思います。)

「ロルフィングは、治療ではなく、何をしているんだろうか?」ということを、ロルファーとしての大先輩でもあり、とても尊敬している「田畑浩良」さんが、ブログの中で書かれている記事があったので、全文を紹介させていただいて、今回は終わりにしようかと思います。

みなさんも、どんな思いが巡ってくるかをゆっくりと観察してみてください。


人生の流れに乗る

山陰から通ってくれているクライアントがどんどんいろんなことに気づいてきて,それをシェアしてくれた。音楽教師でピアノ演奏家でもある彼女は,練習のし過ぎで身体を痛めてしまったことをきっかけとして,セッションに来ている。

彼女は,身体が整ってくるにしたがって,感覚も回復してきて,嫌な場所にいると我慢できないし,何か不自然なことに対して,より敏感になったという。それによって,方向性にズレがあると,身体が教えてくれるようになったという。

ロルフィングは,身体の不具合が調整されたり,パフォーマンスが向上することも勿論大切だが,仮にピアノが急に前のようなパフォーマンスで弾けるようになったとしても,身体を痛めるような使い方や演奏や練習に対する考え方や姿勢が変わらなければ,意味はないだろう。付け焼き刃でパフォーマンスを維持するより,せっかく身体から痛みというサインが出たのだから,生き方そのものを修正しているという見方ができなければ同じことのくり返しになってしまう。

どこにフォーカスして生きるかは人それぞれだが,それぞれの人生の方向性や流れがあるとすれば,それに乗っているときに,人は身体を忘れてしまう感じかもしれない。何か不自然さを身体が教えてくれる準備があれば,すぐに軌道修正することができる。

身体のセンサーとして機能してそれを無視しなければ,人はよくわからない占い漬けやセミナー中毒になったり,人からだまされたり,できるけどしたくないことにやっきになったり,身体を痛めることをわかっていながら,中毒になったりすることもないだろう。

ロルフィングの私が引き出したい最も大切な変化は,この身体のセンサーの感度を上げ,身体と一致することで,その人自身の人生の流れに乗る手助けになればいいなと思う。
 
違和感がなくなることが目的ではない。それを細かく感じ取ることができるように手助けする。つまり,治療ではないということだ。

(『ロルファー田畑浩良のブログ』より引用させていただきました。)




Yuta

( Posted at:2017年6月14日 )