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モニターDさんの感想(セッション7 | 40代 女性)

Dさんもセッション7に入りました。

今まで整えてきた身体の構造のちょうどいい位置に、ボーリングの球ほどの重さがある「頭」を「乗せる」ことができるかが、一つのポイントになります。

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そうすると、身体を支えてくれる「ライン」の流れが、その頭を下からサポートしてくれるようになり、ラインが「頭頂の上まで」抜けていくことができます。

またもう一つのポイントとして、「頭そのものの構造自体に、歪みやいびつさがある」と、それが「他の身体(特に骨盤)が『さらに変化する可能性』を制限してしまう」ことにもなるので、セッション8〜10でさらなる変化を引き出していくために「下準備をする」という意味合いもあります。

さて、どんなセッション7になったのか、Dさんの感想を見ていきましょう。

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今回は「首」のセッションとのことでしたが、首に直接触れたのは後半のほんの数分だけでした。
とにかく今回は今までで一番びっくり&衝撃でした。
ここまでやるの?

まず、口の中。
こんなところにも筋肉はあるんだなと。
何か所かをゆっくり押す感じですが、終わった後、口を閉じていても、いつもより空間があるように感じました。

あと鼻の穴。
自分で鼻をほじるときでもそんなに深くは突っ込まないよ、っていうところまで指が入ってました。
痛くはないのですが、ちょっと怖かったです。
でも鼻からの呼吸がすごく楽になりました。
そして、鼻穴も右と左で息の吸いやすさが切り替わるのもおもしろかったです。
今は左のほうが通りが良いようです。

ちょうど調子が悪いと感じているときのセッションだったので、終わってからとてもスッキリしました。
体調がいいとやっぱり気分も良くなりますね。

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ロルフィングはここまでやるの?

感想の中に「口の中」、「鼻の穴」とあるので、驚かれた方もいると思いますが、僕も実際にロルフィングを受けた時には驚きました。笑

セッション7では、「頭蓋骨の構造が整う」ことによって、「全身の構造がそれに『共鳴して』変化する」ということが起こります。そのために「口の中」や「鼻の穴」にワークをすることがあります。

もちろんきちんとした「訓練」を受けていますし、それをする「理由」もあるので、「歪んだ誤解」を生まないように、丁寧に解説をしていきたいと思います。


複雑な骨の集まりである頭蓋骨

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まずは基本的なこととして、「頭の骨は、たくさんの骨が集まってできている」ということを知っていてほしいなと思います。つまり、「頭蓋骨」というのは「総称」であって、「一つの骨ではない」ということです。

「骨盤」も同じように総称であって、腸骨、恥骨、坐骨が、成人になって「癒合した」寛骨と、いくつかの椎体(背骨の一つ一つの骨)が「癒合した」仙骨と、さらに尾骨を合わせたものを「骨盤」と呼んでいます。「骨盤」という一つの骨があるわけではありません。

さらに寛骨も仙骨も、「癒合した」という言葉からもわかるように、元から1つの骨であったわけではなく、生まれたばかりの子どもの頃は、「それぞれが独立した」いくつかの骨だったのですが、それが成長と共に、1つの骨に「合わさって(くっついて)」いきます。さらにそれらが「まとまって」いくことで、よく知られている「骨盤」になるわけです。

生まれる時に「小さな骨に分けておく」ことで、産道を通る際に、「一瞬、潰れる(形を変える)」ことが可能になり、それによって「母子にかかる負担を減らす」ことができます。さらに生まれた後も、何かにぶつかったり、転んだ際に「ショックを吸収する」こともできるようになります。

ということで、子どもの頃の骨の数の方が、成人した大人よりも「多い」というのも、意外に知られていない事実かもしれません。(大人の骨の数が206個に対して、生まれたばかりの子どもは300〜350個ほどあります。)


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これは頭蓋骨の下顎の骨を外した状態で、下から見ている図です。

色分けされていますが、それぞれが別々の骨になっていて、その間のギザギザしたものが「縫合」と呼ばれる「関節」になります。教科書的には、この縫合の関節は「不動関節」に分類され、「動きがない」と言われています。

しかし、それには「規則的で、微細な動き」があると考えているボディワーク、セラピーもあって、僕もその考えを支持しています。

Aさんのセッション7の時にも書きましたが、それはまるで「地球のプレート同士の動き」のように、ゆっくりとした動きを繰り返しています。

「実際にどう動いているのか」に関しては、「クレニオセイクラルセラピー(頭蓋仙骨療法)」などに詳しいのですが、僕はそれをきちんと学んではいないので、ここには詳しくは書きません。

ここで覚えていてほしいのは、「頭蓋骨はいくつかの骨で構成されていて、動きがある」ということです。

上の図を見てみると、口の中の上顎の部分だけでも、色が分かれて、いくつかの骨が合わさってできているのがわかります。色こそ分かれていませんが、真ん中には上顎を左右に分ける縫合の線も観察できます。

つまり、「(頭蓋骨だけでなく)口自体もいくつかの骨によって構成されていて、わずかに動いている(動くことができる)」ということになります。


口も鼻も、緻密な部品の集まり

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これは、頭蓋骨を左右に分けるように切断して、鼻の部分を中から見ている図です。

ここでも、「鼻を構成しているのは、1つの骨ではない(だから、多少の動きが可能になる)」ということがわかるかと思います。

ちなみにですが、眼球が入っているくぼみの「眼窩」も、いくつかの骨が合わさって構成されています。(後で、詳しい図が出てきます。)

大切なことは、頭蓋骨は「立体的なジグソーパズル」のように、「いくつかの骨が合わさって成り立って」いますが、「眼、鼻、口などの各感覚器自体も、複数の骨によってできている」ということです。

眼のパーツ、鼻のパーツ、口のパーツがあって、それをパズルのように合わせて頭蓋骨ができているわけではなくて、「複雑なパーツを重ね合わせながら、各感覚器が構成されていて、それらがさらに緻密に組み合わさることで、全体として頭蓋を構成している」のが、とても興味深いところです。

では、「なぜ、いくつかの骨が組み合わさりながら、眼、鼻、口が構成されているのか?」という疑問が出てきます。

それには「骨の成長の仕方」と、「感覚器は、様々な感覚情報を受け取る精密な場所」というのが関係しているのではないかと、僕は考えています。


「成長(変化)」する構造

まずは「骨の成長の仕方」についてですが、手足のような四肢の「長い骨(長管骨)」と、頭蓋骨のような「平べったい骨(扁平骨)」では、骨の成長の仕方が違っています。

四肢の長い骨は、それぞれの端が反対方向に伸びていくと、「長く」成長できるので、骨の両端には「骨端線」というのがあって、そこの部分がそれぞれの方向に少しずつ伸びていきます。つまり1つの骨だけでも、どんどん成長していくことができます。

それに対して、頭蓋骨は「(風船が膨らむように)容量を増やすように」成長していかなければいけないので、「1個の骨だけ」ではそれが難しくなります。

もしも「柔らかい膜」のようなものであれば、中から空気を入れたりして「膨らませる」と、容量を増やすことができますが、「硬い骨」はそうはいきません。


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そういうことで、生まれたばかりの子どもの頭蓋は、上の図のように「硬い骨」がいくつかあって、それらを「柔らかく伸び縮みができる膜」によって「つなぎ合わせる」ことで、頭の「丸い形」を形づくっています。

そこから「中に入っている脳の成長」に合わせて、膜の部分が「膨らみ」、骨の端の部分が少しずつ「(上塗りするように)骨化」していくことで、「容量を増やす」ように成長していけるのです。

「なぜ、頭蓋骨が『いくつかの骨によって』形成されているのか」という疑問に対しては、「頭蓋骨の成長の仕方」が関係しているということがわかりました。


繊細な感覚を生み出す、精密な構造

ここからは、「ではなぜ、眼、口、鼻も『いくつかの骨によって』構成されなければいけないのか」ということを説明していきたいと思います。

それらの場所は「感覚器」が位置する場所で、「様々な微細な刺激を受け取らなければいけない」役目があります。

そのために、刺激を受け取る「センサー」と、それを脳に伝える「神経」と、センサー自体の位置調整をする「筋肉」と、そのシステム全体が機能するための栄養を運ぶ「血管」などを、「細かく繊細に配置する」必要があります。

セッション7では、あまり直接的にはワークすることはありませんが、わかりやすくするために、ここでは「眼」の構造を例に考えてみます。

眼には、センサーの役割をする「眼球」があり、その周りに、神経、筋肉、血管などが配置されています。その精密で、芸術的でもある構造を、図を見ながら確認していきましょう。


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眼球が位置する「眼窩」の図ですが、これほど多くの骨が関わり合っています。


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眼球の周りに、細かな筋肉、神経、血管があります。


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眼窩から眼球を外して、筋肉と神経だけにした図です。

それぞれの骨の小さな穴から、神経が出ているのがわかるかと思いますが、こうした神経の「微妙な位置関係」を維持しながら(どれかが過度に「引っ張られたり」、何かに「挟まれたり」しないように)、「眼の機能」ももちろん変わらないままに、「成長(容量を大きく)」しようと思うと、「一つの骨によって作られたくぼみ(眼窩)」では難しいのではないかと思います。

頭蓋骨を形成している「扁平骨」であっても、成長する際には、「全体が均一に伸びる」わけではなく、「端の部分が、少しずつ上塗りされるように伸びていく」ので、「いくつかの小さい骨のパーツに分ける」ことによって、「それぞれのつなぎ目を少しずつ変化、成長させながらも、全体としての複雑な構造と機能は維持する」ことができます。

そういうことで、他の感覚器が収まっている「口腔」も「鼻腔」も、わざわざ「骨のパーツを細かく分けて」、それぞれの構造を作り上げることで、「精密な構造」と「正確な機能」を兼ね備えながら、それらが「頭蓋というエリアに、それぞれの独立を守りながら、まとめて配置できて、なお成長もする」ことが可能になっているのです。


「生きている」構造に、触れることで「変化」を促す

「眼、口、鼻などがいくつもの骨で成り立っている理由」は、「それらが複雑な機能を担っているので、構造も複雑になり、しかもそれが成長(変化)もする構造でもあるから」ということになり、この「頭蓋骨」という構造は、「生きている構造」であるというのが、とても大切なポイントです。

大人になって、目に見える骨の成長が止まってしまったとしても、「縫合」という「動かない関節」になるわけではありません。骨自体も「生きている」ので、常に「代謝」を繰り返していて、何年かすると「全く違う骨に置き換えられる」のが普通です。「ギザギザした縫合の関節のつなぎ目」も、そうやって「代謝(長い期間では『置換』)」が行われているので、「頭蓋骨という全体の構造」も「動き」があります。

そんな生きている、複雑な構造をした「頭蓋骨」の中の、「口腔(口の中)」、「鼻腔(鼻の穴)」を、「繊細な意図を持ったタッチ」でアプローチをすると、それが「反応」してくれます。そして、「全体の構造の歪み」が整っていくことが、自然に起きてくるのです。(実際のクレニオセイクラルセラピーでは、全身の問題に対しても、頭蓋骨を中心に調整したりします。)

話が細かくなりましたが、これがセッション7で「口の中」や「鼻の穴」にワークをする、「解剖学的」な説明になります。

繰り返しになりますがまとめてみると、「頭蓋骨はいろいろな骨が複雑に組み合わさってできていて、口や鼻自体も、パズルのようになっています。この構造は生きていて、変化し続けているので、その骨のつなぎ目の関節である縫合には、動きがあります。それを繊細なタッチで調整することで、頭蓋全体の構造のバランスを取ることができる」ということです。


「後頭下筋群」という、頭のポジションの調整役

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「解剖学的」な説明をもう少し続けてみます。

上の図の口や鼻の奥の方を見てみると、頭蓋骨の「後頭骨」と「上部頸椎」とを結んでいる「後頭下筋群」があって、構造的にも「距離が近く」、骨、筋肉、膜を通しての「つながり」もあります。


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つまり、「口の中(口腔)」や「鼻の穴(鼻腔)」の構造が変化することで、首と頭の境目にある「後頭下筋群」も変化する可能性があるということになります。

この後頭下筋群はとても大切なエリアで、「位置センサー」でもある「固有受容器」が、身体の中でもかなり豊富にあります。他には「足部」にもたくさんあるのですが、それは身体が「その部分の位置関係を、詳細に知りたがっている」ということでもあり、「バランスが優先的に取られていなければいけない場所」ということも意味しています。

足部であれば、身体が地面に接している「土台」部分なので、そこが不安定であったり、歪んでしまうと、その上の構造はすべて崩れてしまいます。そのためにセンサーを多く配置して、常にバランスが取れている状態に保たれています。

後頭下筋群の場合は、脳や様々な感覚器官が収められている「頭」を、常にたくさんのセンサーでモニターしています。ウトウトと寝てしまった場合に、もしもセンサーが少なければ、大切な頭をぶつけてしまって、ダメージを受けてしまうかもしれません。「頭の保護」のためにも、後頭下筋群には、豊富な固有受容器が必要なのです。


「頭(視線)の水平」が最優先

「ふとした時に頭をぶつけるの避けるため」などの極端な場合ではなくても、後頭下筋群の固有受容器は、常に働いています。それは、「頭(視線)を水平に保つ」ためです。

身体の構造は、事故やケガによって大きく崩れることがあったり、日々の姿勢や動きで、慢性的に歪んでしまうことがあります。それでも、人としては「頭(視線)を水平に保つ」ことが、優先順位としては上になるので、「頭よりも下の構造がどんな状態になろうとも、頭(視線)を水平に保とうとする」のです。

「頭(視線)を水平に保つ」ことができると、「視野が広く」なり、「距離感がつかみやすく」なります。人間がまだ「捕食される危険」があった時の名残でもあるのでしょうが、それは「とっさに危険を回避する(逃げる)」ことに役に立ちます。足の速い動物が走っている動画を見ると、「頭はほとんど動いていない」ことに気づきます。(一流のスポーツ選手も、同じような特徴があります。)

いずれにしても、「危険を回避する」ためには、「頭(視線)を水平に保つ」ことが大切で、それを「微調整」しているのが「後頭下筋群」ということになります。


頭が首から自由になるような状況を「セッティング」する

今までのセッションで、身体の構造を段階的に整えてきましたが、「後頭下筋群が緩みにくい(もしくは緩んでも、すぐに戻ってしまう)」ことがあります。それはまだ「頭よりも下の構造が歪んでいる」ので、「頭(視線)を水平に保つ」ために、「後頭下筋群が補正している」ためだと考えることができます。つまり、「必要があって硬くなっている」場合があるということです。

そして、ようやくセッション7の頃になると、「頭よりも下の構造」も整ってくるので、「後頭下筋群が(補正するために)硬くなる必要」がなくなってくるので、「直接、後頭下筋群へアプローチ」しても効果的ですし、「間接的に、口腔、鼻腔からバランスを取る」ことでも、「後頭下筋群がリリースされる」ようになります。

そうして後頭下筋群の制限が取れると、「頭が首から解放」され、「ちょうどいい位置に、頭を置く」こともできるようになり、「重い頭が、身体を支えてくれる上向きのラインの力によってサポートされる」ようになってきます。

いよいよ、ラインが「頭頂の上まで」抜けていくようになります。

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今回は、「なぜセッション7は、口の中や、鼻の穴にまでワークをするの?」という疑問に対して、「口や鼻がある、頭蓋骨の構造は、緻密で、生きていて動きのある」ものであるので、そこに微細なワークをするだけでも、頭蓋骨全体の構造が反応して、バランスが整っていってくれることを説明しました。

その頭蓋骨に起きた変化によって、それ以外の全身の構造が、「共鳴するように」変化することがありますし(触れているのは首、頭だけでも、腰の違和感がなくなることもあります。)、「(今後のセッションで)さらに変化する可能性」も得ることができます。

さらに、口や鼻へのワークは、頭蓋骨と背骨のつなぎ目にある「後頭下筋群」にも影響して、そこがリリースされることで、「頭が首から解放」され、「身体の上に頭を乗せる」ことができるようになります。そのことで「ライン」のサポートを、より感じやすくもなります。

いよいよ身体を上下に貫く「ライン」もはっきりと現れてきて、身体が軽く、自由に感じられるようになってきています。さらにそれが感じられて、Dさんの身体の可能性が引き出されてくるように、ロルファーとしてガイドしていけたらと思います。次回からの「統合のセッション」も楽しみにしています。




Yuta

( Posted at:2017年6月 9日 )