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モニターDさんの感想(セッション5 | 40代 女性)

モニターDさんも折り返しのセッション5が終わりました。

Dさんはこちらが予想している反応と、実際にDさんが感じられているものが違ったりして、やっている側としては感想を見るのが楽しみです。今回のセッション5は、お腹の空間にある内臓や、深いところにある大腰筋を扱うので、どんなことを感じていたのか気になっていました。

以下がDさんの感想になります。

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セッションの後に感じた腰のハリや違和感は、歩いているうちに全くなくなりました。歩くほど心地よく感じるくらい体は楽になりました。

昨日は大腰筋の回だったのに、とにかくセッション中は首の違和感が気になって落ち着きませんでした。眠れなくて何度も寝返りを打つような感じ。首はセッション7でやることなので順調に進んでいるという証拠のようですが、不思議でした。今は首は落ち着いてますし、ちょっと首が伸びてスッとしたように感じます。

左の腕がおかしいことに自分では全然気が付きませんでした。何かありましたか?と大友さんに聞かれても何も思い当たらないし、何ともないのに何を言っているんだろうと思っているくらいでした。

一通りセッションが終わって、どこか違和感がありますか?と聞かれたときに左腕が重くて張ってることに気が付きました。今でも何が理由かは自分ではわからないです。自分のことはわかってるようで、わかってないんだなと、ちょっとガッカリとビックリでした。

今日も右腕に比べるとなんとなく左腕が重く感じます。むくんでいるような感じです。

セッション4あたりから便秘気味になっていましたが、解消されました。溜まってたものが一気に出た感じでとてもスッキリしました。思ってたほど体重に変化はありませんでしたが...。

もう半分終わりましたね。
また次回も宜しくお願いします。

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大腰筋と首の関係

今回はお腹の深いところ(ほぼ背中側)にある「大腰筋」にアプローチしました。大腰筋は、24個ある脊柱の中の下から5つの「腰椎」の横から始まって、股の付け根の大腿骨に付いています。とても長い筋肉です。

そして、呼吸の主役である「横隔膜」には、「脚」と呼ばれる部分があり、それも腰椎に付着していて、先ほどの大腰筋と「手をつなぐ」ように結びついています。

ということで、大腰筋と横隔膜は(構造的に)密接な関係があり、それによって、大腰筋の「脚を前に振り出し、腰椎を安定させる」という働きと、横隔膜の「呼吸」の働きも、(機能的に)お互いに関係し合っています。解剖学者さんが、大腰筋と横隔膜はしっかりとつながり合っていて、解剖の切り分けが難しいと聞いたことがありますが、まさに「切っても切れない」関係といった感じです。

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手をつなぐ大腰筋と横隔膜

今回のDさんの感想を見てみると、「どうも首が落ち着かない」感じがしたと書かれてあります。

なぜ大腰筋にアプローチをすると、首に反応が出てきたのでしょうか。

大腰筋と横隔膜の関係はすでに書きましたが、その横隔膜を支配している神経は「横隔神経」と言って、24個ある脊柱の中の上から7つである「頸椎」から出ていて、それが横隔膜に付いています。

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横隔膜の神経は首から出ています

つまり、大腰筋と横隔膜は関係し合っていて、その横隔膜を支配する神経は、頸椎まで伸びています。少しこじつけな感じもしますが、大腰筋をワークしていて首の辺りに反応が出たことも、解剖学的な説明はできます。

こういう風に、ロルフィングをしていると、触れているところと全く関係のないところに反応が出てくることがあります。

足首を触れているのに、内臓がもにょもにょと動き始めたり、内転筋に圧を加えると、脊柱がすーっと伸びる感じがしたり、頭を軽く持たれているだけなのに、四肢がもぞもぞ動いて伸びていったりすることがあり、ロルフィングを学び始めた頃はとても不思議がっていましたが、ごくごく普通に起きることなので、おなじみの光景になってきました。

それでも、やはりロルフィングを受けられる方は、「なんで違うところが動きたがるんだろう?私が変なのかな?」と、少し困惑される方が多いようです。

上のように説明ができるところもありますし、僕にもわからない関連があったりします。いろいろと勉強していくと、それらの反応の関連性が見えてくることがあります。

先に「なんだかよくわからない現象」があり、それが本を読んでいたり、講習会、セミナーなどの場所で、「ああ、そういうことだったのか」とつながってくるということです。


体験を積み重ねることで、言葉が生まれてくる(言葉に出会う)

僕の場合は、「体験が先で、言葉が後」ということを大事にしています。

身体ときちんと向き合って、自分のできること(ロルフィング)を精一杯していくと、「なんだかよくわからないけれど、なんだかすごいことだというのはわかる」というような体験が起きることがあります。その時点では「理解」はできないのですが、現に目の前でそれが起きていて、それがなぜだか「『とても大切なことである』ということは確信できる」という種類の出来事です。

そういう体験がどんどん蓄積してくると、自然に勉強をしたくなってきます。つまり、そういった体験がある「かさ」に達することで、「学びの発動(きっかけ)」が引き起こされるのです。無意識の層に溜まっている体験たちが、まるで意思を得たように「今よりも、もっと成長しなさい。そうすればあなたにもそれがわかるようになるから」と、僕に語りかけてくるようです。そうやって初めて、自分自身をまるごと「書き換える」ような、本当に深い学びが始まっていきます。

本来であれば、もっといいロルフィングをするために、身体のことをたくさん学んで、それから体験をするというのが、通常の流れのようにも思えるのですが、それだと体験を伴わない「言葉(知識)」だけが増えてしまって、いわゆる頭でっかちになってしまいます。

言葉だけが増えてしまうと、人は体験を遠ざけるようになります。

体験など実際にしなくても、頭が働き考えてしまって、「別に体験しなくてもいいや。なぜなら〇〇という理由があるから」と、言葉、知識が行動を遮ってしまうようになります。さらに、自分が体験しなくてもいいということを正当化できたので、頭は満足感を得ます。頭は満足するので、さらに満足しようとして、どんどん体験をしなくてもいい理屈を拵えていきます。

僕の好きなマンガで、『魔女』(著:五十嵐大介)というのがあって、そこでベテランの魔女が、まだまだ駆け出しの魔女である少女に対して、「体験と言葉は同じ量ずつないと、心のバランスはとれないのよ。」と伝える場面があります。まさにそういうことだと思います。

体験を伴わずに、ただ書物などを読んで言葉をむやみに増やしてしまうと、その言葉たちが先に動き出してしまって、自分の行動を制限して、ますます体験から遠ざかってしまうようになります。言葉の難しいところがそこです。言葉もある程度蓄積されてくると、それ自体が「生命」を持ったように振る舞うのですが、それは自分の身体が体験することを「制限」する方向に働いてしまうことが多いのです。

先に書きましたが、自分の身体を通した体験を重ねていくと、それが厚みを増してきて、ある「かさ」に達すると、それが「言葉に転換」することが起こってきます。体験が言葉を求め、自分に「名付け」を要求するのです。そうやって、名付けられた体験は、自分の意図で呼び出してくることできるので、それが再現性の高い「技術」となっていきます。

その体験の蓄積が、言葉に転換されるプロセスというのは、基本的に「時間がかかる」のですが、それゆえに、生成されてくる言葉の数は、そんなに多くはありません。

達人と呼ばれる人たちの多くが、あまり「語らない」のは、言葉が増えすぎて体験を遠ざけてしまうという、「言葉の難しさ(または怖さ)」を知っているというのと、きちんと「身体化された言葉(自分の言葉)」が生まれてくるには、時間がかかり、そのためにあまり多くの言葉を持っていないからだと思います。彼らは「魔女の智慧」を知っているからこそ、自分から積極的には言葉を求めず、自然に生成されてくるプロセスを待つのです。

体験をすることでしかわからないことがあり、体験を重ねていかなければ響かない言葉があります。

僕個人の考えとしては、ロルフィングを受けていただく方には、「何が起きたかはわからないけど、何か大切なことが起きた気がする」というような体験を楽しんでほしいなと思います。すぐに言葉を求めてしまうのが、現代に生きる人たちの「症状」だとも思うのですが、多くの人が説明をほしがります。

中には、自分の身体で「起きていること」よりも、自分が「理解できること」を大切にし過ぎる人もいて、客観的に見ても、身体がすごく変化したにも関わらず、自分でそれが理解できないがために、その体験を「なかったこと」にしてしまう人もいます。

それでは、「自分の言葉で、自分(の枠)を制限」していることになります。

僕がロルフィングを受けた時も、最初は「何が起きているか理解できない」状態でした。でも、「これが理解できるような自分になりたい」と直感し、そこから僕自身の大きな「変容」が始まったのだと思います。

ロルフィングは、その人全体の存在と向き合い、それまるごとが変容するプロセスを導いていきます。その人が、その人を超えていくために、ロルファーがガイドしていくのです。それには必然的に、「わからないこと」が起こってくることになります。

その「わからないこと」の奥には、豊穣な大地が広がっていて、そこには自分を大きくまるごと書き換えるほどの情報が含まれています。時間をかけながら、それに向き合うと、そこから必ず何かを得ることができます。

Dさんのこれからのセッションでも、そういった「わからないこと」が、Dさんの変容を導いていってくれると思います。次のセッション6も楽しみにしています。




Yuta

( Posted at:2017年4月14日 )